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2018年07月05日

がじまん第385号

せんべー屋のCMソング
ローゼル川田

 農連市場界隈のせんべーカフェは、百円と二百円のコーヒーを出している。ローソンやファミリーマートも百円コーヒーが人気である。砂糖やミルクの他にキャラメルも選べる。
 それにしても市場の百円のコーヒーは安いが、コーヒーを飲みに行くのが目的ではない。屈託のないユンタクの場に身をおき、お喋りをするのが楽しいのである。店には市場っぽい客たちがオモイオモイのまま立ち寄っている。
 メニューのバリエーションもそれなりに工夫し、サンドイッチも出している。午後4時を過ぎるあたりからタダになる。仕切りもなく通路から店内が丸見えの小さな店で、80歳近くの知人は時々他愛のないユンタクをする。端的に言えば、暇つぶしである。隣席の人にも旧知のようにユンタクをする。店の回転率と客単価を計算すると、ユンタクでは売り上げの効率はよくない。それを知ってか、間をおいて新たに注文して飲んでいる。
 とうとうユンタクがエスカレートして、元ジャズミュージシャンだった彼は、「この店のテーマソングを作ってあげましょう」とか言って乗って乗せられて、そういうことになった。客寄せにと勝手に店のCMソングを作ったのだ。
 店を利用しているモアイシンカが集まる日に合わせて、みんなで歌おうということになった。歌詞は超短く、俳句と同じ17文字(偶然)である。曲も超シンプルで5分間の練習で誰でも歌える。ロングトーンを入れても7小節ほど。それをリフレインし、繰り返して歌えば出来上がりだ。
 練習開始。5分で終了するはずが、ギターの伴奏が始まっても、ワイワイガヤガヤ、酔いも手伝い、足並みが揃わない。とうとう一人の酔客が指揮者のマネをして合唱を試みるが、ハチャメチャになるだけ。あまりにも短く、簡単で歌いやすい曲なので結局ふざけて歌っているのだ。
 とうとう元ミュージシャンはギターを抱えてみんなを置き去りにして出て行った。17文字の曲は短すぎたのであろうか。それが理由だとも思われない。「鳩ぽっぽ」も歌いやすい曲だが、歌詞には物語がある。名作曲家滝廉太郎の曲である。確かに店のテーマソングには物語があるわけではなかった。
 ちなみに超短い歌詞は「あなたと~わたしの~天使の~羽根~」である。ちょっと物足りなさのあるミニマル感覚の歌詞だ。考えようによってはイイ感じ。くり返して歌うだけ。
 さらなる提案は三味線唄者により、みんなで歌うことになったという。
 うまくいきますように。



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Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00 │会報がじまん