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2018年08月05日

がじまん第387号

香嵐渓 足助村の旅
伊佐節子

 数年前の八月、名古屋にいる息子一家と愛知県豊田市にある香嵐渓(こうらんけい)と足助村(あすけむら)の旅をした。息子夫婦と幼稚園生の孫と保育園の孫、私たち夫婦の六人での旅だ。この六人はよく一緒に旅をする。
 香嵐渓はイロハモミジやオオモミジなど多くの種類の紅葉する樹が四千本以上も植栽され、清流とともに名古屋一の紅葉の名所として知られている。八月なので紅葉は期待できないが、バンガローがあり川遊びが出来る。
 息子が借りたレンタカーで、黒川、楠、小牧、東名坂道。黒田、春日井市を通り勝川へ。ところがそれから後の高速道路は両側が金属のフェンスで遮蔽され、見えるのは前方だけだ。しかも靄がかかり前方もほとんど見えない。それで車中では孫たちとしりとり遊びや、なぞなぞ遊びをして過ごした。
 工場地帯を過ぎ、曲がりくねった細い田舎道を走る。我が息子ながら運転がうまいなあと嫁と話しつつ田園風景を楽しんだ。
 十二時に足助村の入口に着く。昼食をレストランでとり、川を左に見ながら細い山道を登る。足助村にはバンガローが五棟あり、その中の川に一番近い一棟に落ち着いた。八畳の畳の間には囲炉裏があり、川から吹く風が涼しい。昔の簡素な田舎の雰囲気である。庭にはバーベキューセットがあり星空を見ながらバーベキューが楽しめるようだ。
 孫たちは息子や夫と遊んでおり、嫁が夕食の準備はするというので、生きた民俗資料館と言われる「三州足助屋敷」の見学に出かけた。香嵐渓にかかる橋を渡って進むと急な階段の奥に香積寺という寺がある。ユリ、アザミ、アサガオが咲いていた。すぐ近くに三州足助屋敷があった。昔の豪農の屋敷を再現した古民家で入場料五百円。手仕事の体験工房が十種類ほど並んでいる。奥の門をくぐると、大量の梅干を畳二十畳ほどの板の台に干す最中で、梅干の匂いがあたりに漂っていた。日本タオルを被った中年の女性と、下男風の衣装の中年男が梅干を台の上に広げており、一瞬タイムスリップしたような感じがした。今年は天候不順で例年より不作だが、二、三日干した後に出荷するそうだ。
 バンガローに戻ると、息子と二人の孫は川でナマズ捕りをして遊んでいた、岩だらけの川の流れは速いが、岸の近くで浅く広くなっているところは、流れも緩やかだ。三人はプラスチックの容器や網も持参して用意周到だ。夫は岸の平たい岩に座って孫たちを眺めていた。夫の横に並んで座った。
 川遊びをしている三人を眺めていると、今は亡き姑のことを思い出した。息子が生まれた時、姑が誰よりも大喜びした。後継ぎが出来たと安堵したようだ。次男が生まれた時も「でかした」と大喜びだった。姑は旅行が好きで、親子三代でユースホステルを利用して山の家で過ごしたり、氷ノ山へスキーに行ったりと、いろいろなところに旅行をした。今日、もし姑が一緒だったらどんなに喜んだだろうと追憶に浸っていると、「ご飯ですよー」と嫁の声がした。


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