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2018年09月05日

がじまん第389号

売り子体験
新城静治

 今年一月の中旬、琉銀がスポンサーとなって、沖縄タイムスビルの一階ロビーで、ミニ物産展が開催された。山原模合仲間のKが出品するというので、那覇の道路事情に詳しい私が全面的に協力することになった。
 Kは名護市の安部(一昨年の暮れ、オスプレイが墜落した字)でミカン園を経営している。沖縄のミカン栽培では、誰にも負けないと自負している男だ。前日に那覇で待ち合わせて商品を搬入し、翌金・土・日の三日間は私も売り子として手伝いをする。
 商品は値段の高い順に、麗紅、マーコット、ライム、ポンカン、タンカン、シークヮーサーの柑橘類と、島ラッキョウで、売る気満々。前二日はKと私、友人Mの奥さんの3人で売り場に立った。彼女がにっこり笑って声をかけると、客も足を止める。買う気をそそる言葉かけも、うまい。男二人は、ぎこちない笑顔と、調子っぱずれな呼び込みで頑張った。
 三日目は夫婦交代でMが来た。60代の男三人ではあまり様にならないが、自然と役割分担がなされた。Kは初日から売り込み以上に農園の宣伝をし、かなりの数の名刺もばらまいた。私はというと、彼女の肩代わりとして売り込みに力を入れ、Mは私の補佐をした。
 三日も売り子をすると、自分なりのセールストークが身についた。以下のトーク材料を客によって使い分け、さりげなく買いたくなるように仕向ける。
・タンカンとポンカンの違いを問いかけ、試食させて気づかせる。試食はケチらない。
・年配はポンカン、若者はタンカンを好む傾向があることも紹介。
・ほかのミカンも味比べさせ、好みのミカンを聞いてみる。
・高級ミカン麗紅を試食させ、値段相応の味を実感させる。
・沖縄産のミカン、カーブチーやオウトウ、シークヮーサーの見分け方と、旬の時季を説明する。
・日本で流通しているライムはほぼ100パーセントメキシコ産で、長期輸送のため「ポストハーベスト(収穫後に散布する農薬)」がたっぷり付着していて、本来のライムの香りを損ねている。日本で出荷できるほどライムを生産しいるところは、この農園だけであるとアピールし、試食させる。
・粒の小さいラッキョウを手早くこしらえる方法として、水にしばらく浸けてふやかすと、すぐ皮が剥けることも紹介。(彼女の請け売り)
 ちなみに三日間の売り上げは、15万円弱だった。


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