2018年09月20日
がじまん第390号
「夏の舞姫」オオゴマダラ
七月十日、モロヘイヤを収穫していたら、オオゴマダラがふんわり頭上を飛んでいる。とうとう来てくれたか…と嬉しくなった。いつもより飛来が遅い。例年なら「南国の貴婦人」とよばれる優雅なこの蝶は五月頃には訪れるのに、今年は七月になっても姿を見ることができなかった。昨年も飛来が遅いと思ったが年々遅くなっているように感じる。今年の夏は異常な猛暑が続いた影響なのだろうか。オオゴマダラの翅は麟粉が少ないので光を浴びると透けるような感じで、白い羽がいかにも清潔そうだ。他のチョウに比べると胴体は細く翅の面積が広いので、漂うように飛ぶ。
次の日、三頭ものオオゴマダラが飛来した。食草のホウライカガミの棚の上を悠々と飛んでいる。大急ぎで葉裏を見たら、孵化したばかりの幼虫がいる。今年初めての幼虫だ。さらに探してみると、三令ぐらいの大きさの幼虫が二頭に、産卵したばかりの卵も数個見つかった。小さな食痕があるが幼虫のいない葉があるので、ひょっとしたら蜂にやられたかなと思い、辺りを見回すと、アシナガバチが鉄パイプから出たり入ったりしている。蜂の幼虫がこの中にいるらしい。さや豆の棚の竹やゴーヤーの棚のパイプにも巣を作っているのだろう。例年同様に今年もオオゴマダラの幼虫がアシナガバチの餌にならないよう守らなければならない。まず、捕虫網で手あたり次第アシナガバチを捕獲し退治した。一日に十一匹も退治した日もある。これでひと安心と思ったが、いつ飛来するかわからないので、ホウライカガミの鉢植えを室内に入れ大小の幼虫をそこで飼育することにした。植木鉢五つを室内の出窓に置き、それに幼虫を一匹ずつ住まわせた。
翌朝以後も孵化直後の幼虫を見つけては、植木鉢のホウライカガミに移した。夏休みが近いため、オオゴマダラの飼育の自由研究をしたいと近所の三年生が親子で来たので、産まれたばかりの幼虫三頭を食草の植木鉢とともにプレゼントした。
八月の初旬、大きい方は五令になるらしく、容器の上の方で眠に入っていた。ステッキのような形になり逆さに壁に張り付いて寝ている。植木鉢の小さいものたちもかなり大きくなり葉の裏にいた。
大きい方の幼虫二頭は脱皮し、二倍ほどの大きさになった。ビロードのような真っ黒な地に派手な赤の丸い点や白い輪がくっきり目立つ。夕方には、朝入れた葉がほとんどない。食欲旺盛だ。金色の蛹になるのももうすぐだ。今年の夏も遅ればせながらオオゴマダラの優雅な姿が堪能できそうだ。
伊佐節子
七月十日、モロヘイヤを収穫していたら、オオゴマダラがふんわり頭上を飛んでいる。とうとう来てくれたか…と嬉しくなった。いつもより飛来が遅い。例年なら「南国の貴婦人」とよばれる優雅なこの蝶は五月頃には訪れるのに、今年は七月になっても姿を見ることができなかった。昨年も飛来が遅いと思ったが年々遅くなっているように感じる。今年の夏は異常な猛暑が続いた影響なのだろうか。オオゴマダラの翅は麟粉が少ないので光を浴びると透けるような感じで、白い羽がいかにも清潔そうだ。他のチョウに比べると胴体は細く翅の面積が広いので、漂うように飛ぶ。
次の日、三頭ものオオゴマダラが飛来した。食草のホウライカガミの棚の上を悠々と飛んでいる。大急ぎで葉裏を見たら、孵化したばかりの幼虫がいる。今年初めての幼虫だ。さらに探してみると、三令ぐらいの大きさの幼虫が二頭に、産卵したばかりの卵も数個見つかった。小さな食痕があるが幼虫のいない葉があるので、ひょっとしたら蜂にやられたかなと思い、辺りを見回すと、アシナガバチが鉄パイプから出たり入ったりしている。蜂の幼虫がこの中にいるらしい。さや豆の棚の竹やゴーヤーの棚のパイプにも巣を作っているのだろう。例年同様に今年もオオゴマダラの幼虫がアシナガバチの餌にならないよう守らなければならない。まず、捕虫網で手あたり次第アシナガバチを捕獲し退治した。一日に十一匹も退治した日もある。これでひと安心と思ったが、いつ飛来するかわからないので、ホウライカガミの鉢植えを室内に入れ大小の幼虫をそこで飼育することにした。植木鉢五つを室内の出窓に置き、それに幼虫を一匹ずつ住まわせた。
翌朝以後も孵化直後の幼虫を見つけては、植木鉢のホウライカガミに移した。夏休みが近いため、オオゴマダラの飼育の自由研究をしたいと近所の三年生が親子で来たので、産まれたばかりの幼虫三頭を食草の植木鉢とともにプレゼントした。
八月の初旬、大きい方は五令になるらしく、容器の上の方で眠に入っていた。ステッキのような形になり逆さに壁に張り付いて寝ている。植木鉢の小さいものたちもかなり大きくなり葉の裏にいた。
大きい方の幼虫二頭は脱皮し、二倍ほどの大きさになった。ビロードのような真っ黒な地に派手な赤の丸い点や白い輪がくっきり目立つ。夕方には、朝入れた葉がほとんどない。食欲旺盛だ。金色の蛹になるのももうすぐだ。今年の夏も遅ればせながらオオゴマダラの優雅な姿が堪能できそうだ。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん