2020年01月10日
がじまん第409号-2(Essay 422)
おめでたい
普段はほぼ毎日連絡がある古老から四、五日間、音沙汰がなかった。いつも小さなバイクに大きな図体を載せて走っている。
五日目の夕方。「今何しているの?」と心なしか静かな声で、電話がきたのだ。
「風邪でも引いていたのですか?」
ある晩のこと。古老は、百メートル程バイクを運転して警察官に呼び止められた。
「あなた酒を飲んでませんか」
「はい、アッ、いいえ」
「アルコールの呼気検査をしますから降りて下さい」
「何も事故も起こしてないのにアルコール検査するの?」
「バイクがフラフラしてましたよ」
「フラフラしてませんよ」
「どの位飲んだの?」
「ちょっとだけよ」
「かなりの数値ですよ。どれだけ飲んだんですか?」
「日本酒四合瓶一本だけよ」
「どこで飲んだんですか? 黙秘権はありますが」
「それは言えません」
「言えないんですね」
「はい」
いきなり手錠を嵌められた古老は、パトカーに乗せられ警察署へ連行。尋問室へ案内され椅子に座らされた。
「君たちは一体どういうつもりだ。事故も起こしてないのに。年はいくつだ。階級は?」
「すみませんがここは警察署です。貴方に尋問しているんですよ。ちゃんと答えて下さい。どこで飲んだのです?」
「それはさっきも言ったように言えない」
「いつも飲んで運転しているのですか?」
「はい時々、あっイヤイヤ酒は好きではない。君は巡査長か? 次の階級は難しいよ」
「貴方に尋問しているのですよ。今日は留置所に入ってもらいます」
「何で。事故も起こしてないのに」
「黙秘したから留置所です」
着替えをさせられ、簡単な血圧測定をすると四人部屋に入れられた。名前で呼ばれず番号を付けられると、留置所の上座に座った。朝になり、昼になり、夜がきた。番号で呼ばれ、夜に出された。
二日ぶりの外の空気。飲まず食わずの二日間で少し体重が減った。
「出所祝いに酒が飲みたいね。祝ってくれ」
「泡盛にしましょうか」
「日本酒の四合瓶にしてくれ」と八十一歳は言った。
ローゼル川田
普段はほぼ毎日連絡がある古老から四、五日間、音沙汰がなかった。いつも小さなバイクに大きな図体を載せて走っている。
五日目の夕方。「今何しているの?」と心なしか静かな声で、電話がきたのだ。
「風邪でも引いていたのですか?」
ある晩のこと。古老は、百メートル程バイクを運転して警察官に呼び止められた。
「あなた酒を飲んでませんか」
「はい、アッ、いいえ」
「アルコールの呼気検査をしますから降りて下さい」
「何も事故も起こしてないのにアルコール検査するの?」
「バイクがフラフラしてましたよ」
「フラフラしてませんよ」
「どの位飲んだの?」
「ちょっとだけよ」
「かなりの数値ですよ。どれだけ飲んだんですか?」
「日本酒四合瓶一本だけよ」
「どこで飲んだんですか? 黙秘権はありますが」
「それは言えません」
「言えないんですね」
「はい」
いきなり手錠を嵌められた古老は、パトカーに乗せられ警察署へ連行。尋問室へ案内され椅子に座らされた。
「君たちは一体どういうつもりだ。事故も起こしてないのに。年はいくつだ。階級は?」
「すみませんがここは警察署です。貴方に尋問しているんですよ。ちゃんと答えて下さい。どこで飲んだのです?」
「それはさっきも言ったように言えない」
「いつも飲んで運転しているのですか?」
「はい時々、あっイヤイヤ酒は好きではない。君は巡査長か? 次の階級は難しいよ」
「貴方に尋問しているのですよ。今日は留置所に入ってもらいます」
「何で。事故も起こしてないのに」
「黙秘したから留置所です」
着替えをさせられ、簡単な血圧測定をすると四人部屋に入れられた。名前で呼ばれず番号を付けられると、留置所の上座に座った。朝になり、昼になり、夜がきた。番号で呼ばれ、夜に出された。
二日ぶりの外の空気。飲まず食わずの二日間で少し体重が減った。
「出所祝いに酒が飲みたいね。祝ってくれ」
「泡盛にしましょうか」
「日本酒の四合瓶にしてくれ」と八十一歳は言った。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:05
│会報がじまん