2020年02月10日
がじまん第410号-1(Essay 423)
子どもの時のからだへの疑問
沖縄県立南部医療センターで、部外の有識者として倫理委員と治験審査委員を務めた時、会報雑誌に寄稿依頼があった。以下は、改題した抜粋である。
小学校3年の時のこと。外でめいっぱい遊んだ後、喉が渇いて井戸の水をガブ飲みしながら考えた。
「飲んだ水がしっこになる。では、水を飲みながらしっこをすると、飲んでいる間中しっこは出るのだろうか」
思いついたら、すぐ実行だ。尿意を催した時、我慢して井戸まで直行。大きな柄杓に、2リットルほどの井戸水を注ぎ準備完了。側の下水に放物線を描きながら、おもむろに水を飲み始める。ゴクンゴクン、ジャージャージャー。しばらくすると、放物線の勢いが弱くなる。「待てよ、止まるなよ」という思いで無理に水を飲み続けるが、出ないものは出ない。
このことを、子どもなりに考えた。口とちんちんは直結していない。飲んだ水は時間をかけて体の中を巡り、最後にしっことなって出ていく。体の仕組みの一端が分かったような気がしてうれしくなった。
小学校6年の時、隣家の中学生がコーラを自慢げにラッパ飲みして見せた。あの酸味に慣れない私には、すごいと感心した。と同時に、ゴクン、ゴクンと飲み込む動作で、何回のゴクンで全部飲んだのだろうかと考えた。
そこで、一回で飲み込む水の量を確かめてみようと思った。まず計量カヅプに10cc入れ、それを一回で飲み干し、20cc、30ccと増やしていく。自分が無意識にゴクンと飲んでいる量は、おおよそ40ccだということが分かった。今度はゴクンの限界はどのくらいか考えた。さらに増やしていくと、80ccから苦しくなり、90ccが限界だった。のどちんこ(口蓋垂)の筋肉がきつくなっているのを感じたからだ。
高校1年の時、友人と海に泳ぎに行った。海の中で、泳ぎの得意な友人を追いかけたら深みにはまり、慌てた拍子にウニを踏んづけてしまった。4、5本の棘が足に刺さっている。抜ける棘は抜いたが、1本だけ中で折れて抜くことができない。歩くのに支障がない箇所だったので、放置した。その後棘のことはすっかり忘れ、数週間後に思い出して確かめると、どこにも見当たらない。不思議に思うだけで、分からずじまいだった。
数ヶ月後、何かの作業で木材のささくれが指に刺さった。あの消えたウニの棘を思い出し、棘を抜かかずに観察することにした。2、3日痛みはあったが、化膿はしてない。その後、刺さった箇所の皮膚が、わずかに盛り上がってきた。さわるとその部分が少し固くなっている。観察を続けると、棘を押し出すようにさらに盛り上がっている。2週間ほど経って、棘がなくなった。このことは、ヒトの体が異物を排除仕組みだろうと解釈することで納得した。
新城静治
沖縄県立南部医療センターで、部外の有識者として倫理委員と治験審査委員を務めた時、会報雑誌に寄稿依頼があった。以下は、改題した抜粋である。
小学校3年の時のこと。外でめいっぱい遊んだ後、喉が渇いて井戸の水をガブ飲みしながら考えた。
「飲んだ水がしっこになる。では、水を飲みながらしっこをすると、飲んでいる間中しっこは出るのだろうか」
思いついたら、すぐ実行だ。尿意を催した時、我慢して井戸まで直行。大きな柄杓に、2リットルほどの井戸水を注ぎ準備完了。側の下水に放物線を描きながら、おもむろに水を飲み始める。ゴクンゴクン、ジャージャージャー。しばらくすると、放物線の勢いが弱くなる。「待てよ、止まるなよ」という思いで無理に水を飲み続けるが、出ないものは出ない。
このことを、子どもなりに考えた。口とちんちんは直結していない。飲んだ水は時間をかけて体の中を巡り、最後にしっことなって出ていく。体の仕組みの一端が分かったような気がしてうれしくなった。
小学校6年の時、隣家の中学生がコーラを自慢げにラッパ飲みして見せた。あの酸味に慣れない私には、すごいと感心した。と同時に、ゴクン、ゴクンと飲み込む動作で、何回のゴクンで全部飲んだのだろうかと考えた。
そこで、一回で飲み込む水の量を確かめてみようと思った。まず計量カヅプに10cc入れ、それを一回で飲み干し、20cc、30ccと増やしていく。自分が無意識にゴクンと飲んでいる量は、おおよそ40ccだということが分かった。今度はゴクンの限界はどのくらいか考えた。さらに増やしていくと、80ccから苦しくなり、90ccが限界だった。のどちんこ(口蓋垂)の筋肉がきつくなっているのを感じたからだ。
高校1年の時、友人と海に泳ぎに行った。海の中で、泳ぎの得意な友人を追いかけたら深みにはまり、慌てた拍子にウニを踏んづけてしまった。4、5本の棘が足に刺さっている。抜ける棘は抜いたが、1本だけ中で折れて抜くことができない。歩くのに支障がない箇所だったので、放置した。その後棘のことはすっかり忘れ、数週間後に思い出して確かめると、どこにも見当たらない。不思議に思うだけで、分からずじまいだった。
数ヶ月後、何かの作業で木材のささくれが指に刺さった。あの消えたウニの棘を思い出し、棘を抜かかずに観察することにした。2、3日痛みはあったが、化膿はしてない。その後、刺さった箇所の皮膚が、わずかに盛り上がってきた。さわるとその部分が少し固くなっている。観察を続けると、棘を押し出すようにさらに盛り上がっている。2週間ほど経って、棘がなくなった。このことは、ヒトの体が異物を排除仕組みだろうと解釈することで納得した。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん