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2020年11月10日

がじまん第419号-2(Essay 442)

会長就任あいさつ
新城静治 

 この度、沖縄エッセイスト・クラブの会長に就任することになりました、新城です。「なんくるないさ」を地で行く私ですが、会員の皆さんと「練り上げ、紡ぎ出すエッセイを目指す」という共通のポリシーがあればこその楽観です。コロナの終息が見通せない中の会活動となりますが、皆さんのご協力で乗り越えていきましょう。

魚と星と恋を釣る人

 山原に居る時、夕方は健康のため海岸の遊歩道をウォーキングしている。そこにはいつも何組かの釣り人がいる。彼らとすれ違うとき「こんばんは、アタリはありますか」と声を掛けるが、釣り上げているのを見たことはない。
 ある晩、海岸線の端で、腕組みをして竿先を注視している40歳前後と思しき男性がいた。太公望の風格があったので、何を狙っているのか聞くと、ガーラだと言う。「ガーラを釣るには、当たり外れが大きいのでは」との問いに「大物が釣れるか坊主かで、坊主の回数が多いですね」と答えた。昨年この場所で釣ったという37㎏もしたガーラの写真を、スマホで見せてくれた。「すごい! こんな大きな魚だったら、安物の私の竿では釣れないな」と言うと「それで嫁には、元手をかけた分の魚は釣って来なさいよと、愚痴られるんですよ」と、笑いながら話した。うるま市から来たと言い、釣れたら家に直行、釣れなければ、大宜味村内の親戚の家で仮眠してから帰るとのことだった。
 星がきれいな晩だった。20代半ばと思われるカップルに声を掛けると「小さなアタリが、数回ありました」と彼氏が答えた。すると側に居た彼女が「私のには、全くアタリがない。釣りって退屈ね」と、独り言のようにつぶやいた。私は彼女に言った。「退屈しているときはね、空を見上げてごらん。ほら、満天の星を。織り姫様があなたを見て笑っているよ」 すると彼女が「エッ、どこ、どこ。どこに見えるんですか」と興奮気味に聞いた。私は天の川や織り姫、彦星を指差しながら言った。「星を見ていると、とてもロマンチックな気分になれると思うよ。特にあなた方のようなカップルにはね」と、言葉を残してその場を後にした。
 二、三日後の晩、またあのカップルと会った。暗がりの中、今度は向こうから「こんばんは、今日は遅いですね」と彼氏が声を掛けてきた。流星群を見るため歩く時間をずらしたと言うと、彼女が我が意を得たりとばかりに「実は私たちもペルセウス座流星群を見に来たんですよ。今日は星を見るのがメインで、釣りは二番です」と、嬉しそうに話した。
その晩、私も数年前に見損ねたペルセウス座流星群を、見納めしてもよいと思うほど堪能した。


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Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00 │会報がじまん