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2021年10月10日

がじまん第430号-1(Essay 463)

島元巖先生を偲ぶ
内間美智子
 
 島元巖氏が去る四月二十八日、八十八歳でご逝去された。沖縄エッセイスト・クラブ創立時からの会員で、長年、クラブを支えてこられた。
高齢者が亡くなると図書館が一つ消えるようなものだという譬え(謂われ)があるが、氏はまさにそれを体現されたような方であり、惜しまれる博識の士であられた。
 会の規約・申し合せ事項等を作成され、会の運営にも尽力された。また合同の作品集38で、南ふうさんの作品にも記されているように、三代会長に就かれた時、会報「がじまん」を発案され、自ら発行作業を始められた。後に、南ふうさんがその事務作業を引き継ぎ、郵送費の節約で月二回から月一回の発行へと様変わりはしたものの、月に二作品の発行は定着している。先日九月号が届いたが、なんと四二九号である。ふうさんも書いているように「継続は力なり」だ。今では年一回発行の合同作品集に並び、会員の執筆の場として、重要な活動の柱になっている。
 ただ、氏はご健康が万全ではなく、心臓バイパス手術や脳幹出血、胃潰瘍など大病を乗り越えて来られた。
 そういう中でも、ご自身お持ちの豊富な知識・知恵を後輩に教授なさろうと、〝ことばについて語る会〟を作られた。コーヒーを啜りながら、ことばの妙を楽しむ会だ。ことばの奥深さに感心したり、面白さに笑ったり……。氏の著書『一語一笑』のタイトルをもらい、「一語(いちご)一笑(いちえ)の会」とした。文章作法・修辞法あり、日常生活の中に飛び交うことばの面白さなどを捉えて楽しむ。月一回の開催で、ゆうに百回を超えた。
 度々、ご自身の健老学と称して「何でも見てやれ、聞いてやれ、調べてやれの野次馬根性」を呈示された。野次馬根性は即ち、好奇心だ。天国でも、周りの人々に、好奇心、チャレンジ精神と共に蘊蓄を語っておられるだろうか。
氏は、生前、「琉球大学でいご会」へ寄稿しておられる。その寄稿文の一部を引用して結びたい。

〝奉公〟といえば時代錯誤の言葉かも知れないが、私は敢えてこの語を使いたい。献体は、私を生かしてくれたこの世のすべてに対する私の〝最後のご奉公〟だと。そしてそれは、私のできる精一杯の〝奉公〟の表現である。

 心からご冥福をお祈り申し上げます。


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