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2022年11月10日

がじまん第443号-2(Essay 490)

イソヒヨドリ
伊佐節子

 我が家の屋敷畑には一年中多くの野鳥が来る。
 冬にはシロハラが来て、落葉を寄せ集めたところや堆肥を掘り起こし、地虫を漁る。落葉や堆肥を見てシロハラが飛来したことがわかる。シロハラは波打つように飛ぶ。スズメやヒヨドリもよく飛来する。
 囀りの美しいのはイソヒヨドリだ。庇や屋上の手すりなどに止る。番で来るときも雄が地上に降りていると雌は庇の上にいたりする。単独行動を好むようだ。雄も雌も複雑で美しく透き通るような独特の節回しで、自分の囀りを楽しんでいるようにも見える。イソヒヨドリは、スズメ目ツグミ科に分類されイソツグミともいわれているそうだ。体形は華奢で足が細い。ヒヨドリより少し小さめで、地上で移動するときは小走りに素早く動く。
 雄の羽毛は背の方が青く翼と尾の部分は紺や黒く見える。金属光沢があり光の当たり方によって緑色を帯びたり、紫がかった赤色に見えたりして実に美しい。雌は灰褐色で鱗模様があり極めて地味である。本来は海岸の磯や岩場に生息する野鳥だが、近年は市街地にもよく来るようになった。近くの駐車場でもよく見かける。日本では北海道では少なく、本州以南には普通に見られる野鳥だそうだ。
先日、セブンイレブンの入り口に、二羽のイソヒヨドリがいた。自動ドアから中を覗き込み、窓のアルミサッシのガラスを突いたり、ドアのガラスを突いたりしている。買い物客が出てくるときにドアが開いたら中に入るつもりだろうか? と見ていたが誰も出てこなかったので見届けることはできなかった。いつか、ゆっくり時間を作って見届けたい。
 どこで見ているかわからないが、夫が畑を耕すといつの間にか現れる。人間に対してあまり警戒心がないらしく、夫にかなり近接する場所で昆虫や蛙、蚯蚓などをとらえている。夫が耕作を終えた後も畑に残り地面を突いたりして、時々美しい声で囀って耳を楽しませてくれる。夫の話だと視線が合ってもたじろがず逃げ出さないそうだ。
 妹の農場には大きな休憩所があり友人知人が集って賑やかだが、そこの屋根にイソヒヨドリが巣を作った。雛が育つまでは驚かさないようにと小声で話をしたり、笑いをこらえたりした。下に人間がいても気にする様子もなく親鳥は雛に餌を運んでいた。雄の方が餌を運ぶ回数は多いように感じた。農場を訪れる人を充分楽しませたあと、雛たちは無事に巣立った。
 イソヒヨドリは鳥獣保護法で捕獲や販売が禁止されているが、人間を恐れず、身近で暮し、営巣もするので捕獲したり飼育する必要もなく自然の状態で十分楽しめる野鳥である。



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Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00 │会報がじまん