てぃーだブログ › 沖縄エッセイスト・クラブ › 会報がじまん › がじまん第447号-1(Essay 497)

2023年03月10日

がじまん第447号-1(Essay 497)

続・首里犬
金城弘子

昨年一一月の三〇日、三一日の両日、小田和正のライブに行った。特に小田和正のファンというわけではなかったが、是非行きたい理由があった。
 小田氏の沖縄公演は、コロナの影響等もあって、二〇一八年以来、四年ぶりの開催だった。私は二〇一九年一〇月号の「がじまん」に、小田氏と私の妹の犬のことを題材にして書いた。今回はその続編である。
小田氏は全国各地で公演を行う際、事前に地元の名所等を訪れ、ライブの前にその様子を映像として流している。二〇一八年の沖縄公演では、本人が首里城を訪れた際、首里城入口近くにある妹の家の前に繋いでいた二匹の犬に「オイ首里犬(シュリケン)、久し振りだね! 俺を待っていたか?」などと話しかける様子が映っていた。その翌日から多くの小田ファンが、犬を見に妹の店に集まるようになった。しばらくして二匹のうち、レオンが盗まれてしまったが、ファンのおかげで無事に戻ってきた。
 現在、妹はコロナの影響もあって店を閉め、一時的に両親の住んでいた南風原でレオンと一緒に暮らしている(もう一匹の犬は病気で亡くなった)。
 昨年、沖縄で小田氏のライブがあることを知った私は、まだ「小田和正」を知らない妹をライブに連れて行きたくて、半年も前からファンクラブに入り、事前予約のチケット二日分を入手した。入手が困難なチケットをゲットしたと話しても、妹は大して乗り気でもない様子だった。
 ライブ前の一一月二九日の朝に妹に電話し、「小田さんは前回もライブの前日に犬に会いに来たようだから、今日は犬を連れて首里に行っていた方がいいよ」と告げた。「まさか、来ることはないと思うよ」と言っていた妹から電話があったのは夕方だった。午後から首里に行って木に犬を繋いでいたら、首里城の方から小田氏のスタッフが来て、「犬は居たのですか? 午前中に小田さんがここに来ていましたが、犬に会いたがっていましたよ」と、名刺を置いていったと言う。
 翌ライブ当日、ご当地紀行が始まり、小田氏が「今回はこれまで来た、沖縄特集です」と説明し、今帰仁城跡や摩文仁の丘など数ヶ所の映像が流れた。最後に妹の店の前で「首里犬、居ないとは聞いていたが、やっぱり居ないのか! 会いたかったなあ!」と独り言を呟き、寂しそうな様子が映っていた。隣の妹を見ると泣いていた。
 小田氏のライブは最高に素晴らしく、私も妹もすぐに大ファンになった。
 翌日のコンサート終了後に妹は「二匹のうち一匹は亡くなりましたが、盗まれた方のレオンは元気です。今度来沖させる時は首里にレオンを連れて行きますので、いつでも会いにお越しください」と書いた手紙をスタッフに渡していた。


タグ :金城弘子

同じカテゴリー(会報がじまん)の記事

Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00 │会報がじまん