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2024年04月10日

がじまん第460号-1(Essay 523)

感動をありがとう!
             
金城弘子 

 1月13日、東京ドームにビリー・ジョエルのコンサートに行った。ビリーはピアニスト・作曲家・ロッカーとして「ピアノ・ロック」という分野を確立した世界的にも有名なアーティストである。彼の曲はレコードやCDでよく聞いていたが、ライブはいつでも行けるだろうと一度も行っていなかった。彼は今年74歳、最後の日本公演になるかもという情報もあり、是非とも行きたかった。
 彼はこれまで日本で10回余りの公演をしているが、今回は2006年以来16年ぶりで、しかも東京で一夜限りのライブ。彼は最後の日本公演から今日までの間に、うつ病や交通事故による大手術などいろいろなトラブルに見舞われたようである。
 19時、ビリーがピアノの前に現れると、全国各地から参加した約5万人の観客から「ウォーッ!」という地響きのような声が湧いた。「サンキュー トウキョウ! サイゴマデタノシンデクダサイ!」と叫んで「マイ・ライフ」を歌い始めた彼の姿に、衝撃を受けた。私はこれまで、彼の透明で艶のあるハイトーンボイスやクラシックの素養もある美しく哀愁のあるメロディから、上品にピアノを弾く「ピアノ・マン」だと思っていた。が、目の前の彼は激しく体を動かし力強く変幻自在にキーを叩きながら、少し渋みは加わったものの、CDと全く変わらない歌声で歌っている。涙が出そうになった。
「オネスティ」「素顔のままで」など立て続けにヒット曲を歌っていたが、スローバラードや激しいロック調の曲に合わせて、声色も変える歌い方にも、全く衰えが感じられない。イントロが口笛から始まる「ストレンジャー」では、哀愁に満ちた口笛を吹いたかと思うと、いきなり立ち上がって激しくピアノを叩き出した。また、ヒョイとピアノの上に腰掛けたり、長いマイクを振り回しキャッチして歌ったり、パフォーマンスも格好いい。
 メロディも素晴らしいが、歌詞もまた、人間の内面の葛藤や社会に対する痛烈な風刺であったりと、深い思いや主張がある。
 ラストの曲はハーモニカを首にかけ、ピアノを弾きながら歌う美しいメロディの「ピアノ・マン」。そしてアンコール曲は私が大好きな「ハートにファイア」を、ギターを弾きながら激しく歌った。世界的な事件や人物を時系列でとらえたものだが、ビリーはサビの部分「ウイ ディドゥント スタート ザ ファイア」を観客に歌うように促し、私も大声で歌った。
 2時間半、全27曲をぶっ通し。74歳、唯一無二の天才アーティストに心の底から感動した。サックスやトランペット、ストリングス、コーラス等、バックのクオリティも高く、最上の音色だった。
 ビリー、感動をありがとう。そして、これが最後の公演にならないことを祈りたい。


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