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2024年06月10日

がじまん第462号-2(Essay 528)

ウリズンから羊雲へ
新城静治 

 沖縄には「ウリズン」といわれる季節がある。私の体感では旧暦の二月頃がその時季で、草木が芽吹き、新緑の瑞々しさを肌で感じることが出来る。山原の森ではイタジイの新緑が代表的だ。沖縄大百科には、ウリズンの時季を旧暦の二月と三月とあるが、旧暦の三月になると、森は黄緑の新緑から濃い緑に衣替えをしている。ましてや、初夏をウリズンとは言わない。
 入れ替わりに、あちこちで清明祭(シーミー)が行われる。墓の周辺にはテッポウユリが咲き、少し遅れてグラジオラスが咲いてくる。 海洋博が開催される前、名護の手前の国道58号「名護の七曲がり」では、この時季にテッポウユリが咲き、ドライバーの目を楽しませてくれた。今は道路が拡張整備され、昔の面影はない。
 三寒四温という言葉がある。中国由来の熟語で季語は冬となっている。しかし、日本では春の方が寒暖の変化が著しい。そのため、季語にこだわらず三寒四温を春の時候のあいさつに取り入れることも多くなっているという。私も実際の天候に合わせての使い方がしっくりいく。春に三寒四温をやり過ごした後、初夏が来ると体が覚えている。 ところが、今年はGWの連休明けになっても、寒さと暑さの入れ替わりが多かった。私が住んでいる冷暖房なしの大宜味の古民家では、就寝は毛布か布団か迷うことになる。
 いつもは梅雨入り前後に咲いている月桃やイジュの花が、今年は例年より早めに咲いていた。喜如嘉のオクラレルカ(アヤメの仲間)も今年は早めに咲いていたと、地元の住民が話していた。これらの早咲きや、旧暦の三月をウリズンの時季と思えないのは、地球温暖化の影響かも知れない。
 例年五月の中旬、梅雨入りをしている。梅雨入りはしたものの、途中で晴れ間の続く日がある。「梅雨ノナカユクイ」は数日だが、中には梅雨明けと思わしめる長期の場合もある。このナカユクイ中に、街灯や室内の電灯など、ありとあらゆる夜の明かりの下で、無数のシロアリが乱舞する日がある。家の中まで入り込むから、閉口してしまう。ヤモリには食べきれないほどのご馳走になるだろう。
 先日、大宜味の安根海岸を「いい日旅立ち」を口ずさみながらウォーキングしていた。途中「羊雲をさがしに…」の箇所でふと空を見上げると、小さな積雲が数個見えるだけだった。淡い期待だなと思いながらも振り向いた後ろの空に、なんと羊雲が張り出しているではないか。何という偶然。スマホで写真に収め、ウォーキングを続けた。


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