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2005年09月15日

がじまん第85号

大シヌグ
いなみ悦

 国頭村安田のシヌグは有名で、昭和五十三年国指定重要無形民族文化財となった。これまで話には聞くが一度も見たことはなかった。なにせ遠い山原のことである。今年は、ある会が企画してくれたので参加した。
 旧暦七月の盆明けの初亥に行われる来訪信仰の儀礼で、ウンジャミ(海神)とならぶ重要な祭祀である。シヌグは兄弟ないし男の祭りという意味があり、男達が中心の祭りである。山の神に農作物の豊作、集落、家族の繁栄をまず祈り、次に海に向かって同様の祈りを捧げる。男達は草木を身に纏い、神に扮して村を清めるために下山する祀りという。
 神人の願立ての儀式から見るため早朝那覇を発つ。名護を抜け源河から坂を越え、慶佐次のマングローブ林を見て安田着。すでにカメラマンや報道陣がスタンバイしている。少し早い昼食の弁当を食べる。
 十一時半、神人二人の登場で、安田の地租である根所で願立をし、その足で近くの神木の拝所で辺戸の安須森へ遙拝する。次に何ヶ所か拝む。そのころ村の男達は藁を一握り掴み鉢巻きにし(ガンシナー)、また腰に締め、山(三ヶ所)をめざして動き出す。老いも若きも、歩けない一、二歳児は父親が抱いている。Tシャツ・半ズボンが多い。村外の人も参加してよいとのことで、観光客も飛び入りで山へ登る。その間女性客は体育館の事務所で昨年のビデオを観せてもらった。
 一時過ぎ、太鼓が鳴り、“エーヘーホーイ”の雄叫(おたけ)びが響き三法の山から相応じて山を下りてくる。ガンシナーには蔓草が巻かれたりゴンズイの真っ赤な実がいっぱい挿され、みごとな冠である。体には蒲葵の葉や、マーニの葉、その他いろんな木の枝で覆い尽くす。手には身丈を越す御祓い用の木の枝を持っている(草装神)。三方の合流地点では女達が邪気を祓ってもらおうとひしめき合って待っている。私も畦を横切って群集に就いて頭を垂れた。

   霊力受けし一日男神の玉の汗   悦

 祓い終えた男神はそのまま海をめざし、草木を脱ぎ捨て、山、海に向かって祈願し、その後海に入り一切の悪災を太平洋に流し去る。そして村の川で禊をする。夜六時より女性によるウスデークが、篝火の中で踊り尽くされる。男は火を囲み昼間のシヌグに杯を重ねた。
 九時過ぎ祭りも終り、星空を仰いで宿へ発った。


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