2006年04月01日
がじまん第98号
創作・ある言訳
「あたくしねぇ、先日、宅がお世話になった方々をお招きして、持て成してくれと申すものですから、ささやかな晩餐会を催しましたの」
「まあ、さようでございますか。それはようございましたわね」
「ありがとうございます。それが……。その招かれたお客さまの中に、お一人精神科のお医者様がいらっしゃいまして、いまだに気にかかることがございますの」
「まあ、どうかなさったんでございますか」
「あの方、こんな質問をあたくしになさったんでございますよ」
「どんなでございますか」
「それが……、キャプテン・クックが世界周航を三度やって、そのどれかの時に死んだ。何回目の時でしょうって」
「あらぁ、ちょっとふざけた質問でございますわねぇ。みくびってませんこと。三回目に決まってるじゃございませんか」
「そうなんですけどあたしく、宅のお世話になっった大切な方の、ご機嫌を損ねてはいけない。三度目とお答えしてしまうと、あたくし馬鹿にされたような悔しさが、顔に出たりして、きっとあの方が、気まずい思いをなさると思いましたの。でもねぇ奥様、ご安心あそばせ。すぐに答えを思いつきましたわ」
「なんとお答えになりましたの」
「えぇ、あたしくねぇ…、こう申しましたの。別の例を挙げてくださいません? あたくし、歴史にはあまりくわしくないもので…って」
「まあ奥様、すばらしいお答えでございますわ。だって、これでしたら相手も傷つけず、しかも、ユーモアも効いていて、最高の答えでございますわ奥様」
「でもねぇ奥様、あの方にはこのユーモア通じてなかったみたい。ちっともお笑いにならないで、何か不思議なものでもご覧になるような目で、お見つめになって、うなずいていらっしゃるだけでございましたもの。あたくし、あの方のこと、どこか精神的に欠陥がおかりはないかと、気になってますのよ」
喜舎場紀江
「あたくしねぇ、先日、宅がお世話になった方々をお招きして、持て成してくれと申すものですから、ささやかな晩餐会を催しましたの」
「まあ、さようでございますか。それはようございましたわね」
「ありがとうございます。それが……。その招かれたお客さまの中に、お一人精神科のお医者様がいらっしゃいまして、いまだに気にかかることがございますの」
「まあ、どうかなさったんでございますか」
「あの方、こんな質問をあたくしになさったんでございますよ」
「どんなでございますか」
「それが……、キャプテン・クックが世界周航を三度やって、そのどれかの時に死んだ。何回目の時でしょうって」
「あらぁ、ちょっとふざけた質問でございますわねぇ。みくびってませんこと。三回目に決まってるじゃございませんか」
「そうなんですけどあたしく、宅のお世話になっった大切な方の、ご機嫌を損ねてはいけない。三度目とお答えしてしまうと、あたくし馬鹿にされたような悔しさが、顔に出たりして、きっとあの方が、気まずい思いをなさると思いましたの。でもねぇ奥様、ご安心あそばせ。すぐに答えを思いつきましたわ」
「なんとお答えになりましたの」
「えぇ、あたしくねぇ…、こう申しましたの。別の例を挙げてくださいません? あたくし、歴史にはあまりくわしくないもので…って」
「まあ奥様、すばらしいお答えでございますわ。だって、これでしたら相手も傷つけず、しかも、ユーモアも効いていて、最高の答えでございますわ奥様」
「でもねぇ奥様、あの方にはこのユーモア通じてなかったみたい。ちっともお笑いにならないで、何か不思議なものでもご覧になるような目で、お見つめになって、うなずいていらっしゃるだけでございましたもの。あたくし、あの方のこと、どこか精神的に欠陥がおかりはないかと、気になってますのよ」
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん