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2006年06月01日

がじまん第102号

さくら
久田友明

 高知城三の丸の桜(ソメイヨシノ)の開花宣言、平年より八日早い開花であるというニュース。
 東京の染井吉野も三月二十五日(土)に開花したとの花便り。
 折しも、四月一日(土)に東京九段の靖国神社で「同期の花」を今年も歌いましょうとの誘いがあった。はじめ「同期の桜」といっているのかと思ったら、「同期の花」といっているのだと今年になって気付いた。去年から誘っていただいた人は大塚さん夫妻。大塚さんは、第二次大戦中、ビルマ戦線に従軍し生き残った兵士。ビルマ(現ミャンマー)では、英国軍から苛酷な捕虜生活を強いられたらしい。多くは語らない。
 現在は大塚商会(上場会社)の会長さん。従業員七千人、四千五百億円の取引量、四十万余の会社の会計・経理のコンピュータ処理をしているらしい。利益は二百億を超えるという。
 去年、新築間もない本社ビルに案内された。本社ビルは、一口に言って、インテリジェント・ビルのようだった。ビルは防犯、防火防水、耐震等々、コンピュータによる自動制御装置が全てに用いられている超近代的ビルという感じであった。
 十一階の会長室にも案内された。絵画にも趣味があるようで特別な雰囲気があった。屋上庭園は禅的にしつらえられているという感じであった。その時、奥さんも会長室ははじめてであると言っていた。
 印象に残るのは、大塚さんが、ビルの敷地を割いて、歩道や公共的広場を広々ととり、栃の木、セコイヤ等を植樹していることだった。都市環境整備について一家言をもつ、企業創業者の顔のようなものを感じた。
 四月一日、東京九段にある、ホテル グランド パレスで午後一時に待ち合うことになっている。
 八時三十分の日航機で東京へ。沖縄は葉桜で青葉もまじる。気温は若葉冷えの感じ。
 羽田空港着からモノレール経由でJR飯田橋駅着までには十二時を過ぎていた。飯田橋付近は車、人で混雑していた。靖国神社や千鳥ケ淵での花見の人々の群れである。徒歩七分のホテルまでタクシーを拾う。
 混雑を極めているホテルのフロントで大塚夫妻に会う。一時ジャストだった。この機会を失したら恐らくこのような人込みでは会うことは出来なかっただろう。
 昼食後、「同期の花」会場に向う。日本一の大鳥居を目当てに九段坂を登る。三百万人を超える群衆。靖国神社参拝客よりも花の宴の客が多い。そして、小泉首相の効果も。「同期の花」の会場は、参道の中ほどに建つ大村益次郎の銅像の側である。大村は日本陸軍の創始者。いさぎよく散る桜は、軍人の象徴だとのべた。兵営や学校にも桜を植え、軍国主義の教育をしたことも事実。
 未曾有の人出の中の一隅から「同期の桜」の合唱に万朶の花の二、三片が風に舞った。
 靖国の社は日本の桜の原点になっている。


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