2007年05月15日
がじまん第125号
『養秀』第七号と『志(し)じ満(ま)』
今、お互いが毎日手にする普通の新聞紙の一ページの半分の大きさ(タブロイド版)の欄外上部の左端から右端へ、―― 一九五一年一月二十七日 養秀(創立五周年記念特集)第七号――の活字が並ぶ。第七号の下の部分に、三段抜きの枠の中に、気品ある「養秀」の楷書体の文字があってひときわ目立つ。その下に、「首里高等学校 文藝部」とあり、藝は画数の多い旧漢字。
今から五十六年前、私たち六期の者が、あとふた月で卒業という時期に発行された活字の学校新聞である。この新聞の三ページの最下段の「編集を終えて」の中で「文芸誌――志じ満――は五周年を期に――養秀――と改題し、学校新聞として発行することに……尚温王が沖縄文化を表泉して書かれた『海邦養秀』の扁額のことは餘りに有名です。私たちはこの不変の歴史的言葉を新しい文化の燈にしたい。……(以下略)」と説明がある。
私たちの作った〈志じ満〉の創刊号から六号までは、蝋紙原紙にやすりを下敷きにして、一字一画、力を入れて書き込み、謄写版で一枚一枚、丁寧に刷り上げて作った代物。用紙はアメリカ占領下の払い下げの規格の大きさで、今のB5版より少々大きめのもの。
創刊号は一九五〇年九月九日の発行。文芸クラブ員名簿欄に一年生五人・二年生四人、ともに男子のみ。私たち三年は男子十一人、女子十人で、総員三十人の氏名が列記されている。内容は創刊の辞、自由詩五点。「USO呆騒局」の見出しの下に、風刺的文章二題。そのひとつを紹介しよう。
「団員募集。(一)趣味の何たると問わず (二)人員七〇〇名。但し、盲従を得意とする者は優遇す。 応援団長K生」
第二号は日付不明。三号四号は十月の十三日と三十一日。五号は十一月十五日、年明けて一月五日付けで六号が発行されている。その後は改題されて学校新聞となる。
〈志じ満〉はたったの九枚。創刊号から七号までの持ち主は、儀間進君であった。〈志じ満〉に詩歌を発表した文芸部員の一人で、今もエッセイストの肩書きで、新聞・雑誌等に健筆を振るっているのはご承知の通り。
三年前の夏、彼の書庫の中で篋底深く秘した形にあったのが、遂に陽の目をみた。
私たちは驚愕し、興奮した。そして、私は恥じた。半世紀前の私の筆跡と駄作が如実に形を現したのである。今、この遺物(?)は、「養秀文庫」の架上で会員の来訪を静かに待ち望んでいるはずだ。
上間正恒
今、お互いが毎日手にする普通の新聞紙の一ページの半分の大きさ(タブロイド版)の欄外上部の左端から右端へ、―― 一九五一年一月二十七日 養秀(創立五周年記念特集)第七号――の活字が並ぶ。第七号の下の部分に、三段抜きの枠の中に、気品ある「養秀」の楷書体の文字があってひときわ目立つ。その下に、「首里高等学校 文藝部」とあり、藝は画数の多い旧漢字。
今から五十六年前、私たち六期の者が、あとふた月で卒業という時期に発行された活字の学校新聞である。この新聞の三ページの最下段の「編集を終えて」の中で「文芸誌――志じ満――は五周年を期に――養秀――と改題し、学校新聞として発行することに……尚温王が沖縄文化を表泉して書かれた『海邦養秀』の扁額のことは餘りに有名です。私たちはこの不変の歴史的言葉を新しい文化の燈にしたい。……(以下略)」と説明がある。
私たちの作った〈志じ満〉の創刊号から六号までは、蝋紙原紙にやすりを下敷きにして、一字一画、力を入れて書き込み、謄写版で一枚一枚、丁寧に刷り上げて作った代物。用紙はアメリカ占領下の払い下げの規格の大きさで、今のB5版より少々大きめのもの。
創刊号は一九五〇年九月九日の発行。文芸クラブ員名簿欄に一年生五人・二年生四人、ともに男子のみ。私たち三年は男子十一人、女子十人で、総員三十人の氏名が列記されている。内容は創刊の辞、自由詩五点。「USO呆騒局」の見出しの下に、風刺的文章二題。そのひとつを紹介しよう。
「団員募集。(一)趣味の何たると問わず (二)人員七〇〇名。但し、盲従を得意とする者は優遇す。 応援団長K生」
第二号は日付不明。三号四号は十月の十三日と三十一日。五号は十一月十五日、年明けて一月五日付けで六号が発行されている。その後は改題されて学校新聞となる。
〈志じ満〉はたったの九枚。創刊号から七号までの持ち主は、儀間進君であった。〈志じ満〉に詩歌を発表した文芸部員の一人で、今もエッセイストの肩書きで、新聞・雑誌等に健筆を振るっているのはご承知の通り。
三年前の夏、彼の書庫の中で篋底深く秘した形にあったのが、遂に陽の目をみた。
私たちは驚愕し、興奮した。そして、私は恥じた。半世紀前の私の筆跡と駄作が如実に形を現したのである。今、この遺物(?)は、「養秀文庫」の架上で会員の来訪を静かに待ち望んでいるはずだ。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん