2008年10月05日
がじまん第153号
夏の楽しみ(一)オオゴマダラ
庭に飛来するチョウは、どのチョウも優雅で愛らしいが、オオゴマダラは別格である。
石垣島に夫が勤務している頃に六号鉢に植えられたホウライカガミをもらったのが、付き合うきっかけだった。置いたところに根を出し、そのまま根付いてしまった。今では、ヘチマ棚として作った棚の全面を覆い、艶やかな葉を繁らせている。
ホウライカガミの成長とともに、いつの間にかオオゴマダラが訪れ、産卵するようになった。白く小さな花を咲かせるが、密が豊富なようで、チョウやミツバチ、アシナガバチなど多数訪れ、羽音も聞こえるほどである。
オオゴマダラの優雅な舞い姿は、何時見ても心休まる。冬には姿が見えなくなり、暖かくなると飛来して産卵する。ひらりひらり飛ぶ姿を眺めながらどうしてここに食草があることがわかるのだろうと不思議に思う。小さな庭の一角で起こる小さな出来事だが、自然の不思議さにいつも心打たれる。
ホウライカガミは毒を持つ植物なので、それを餌にしているオオゴマダラは、他の生き物には捕食されないと書かれている文献もあるが、我が庭で観察する限り、それは違う。卵の時は、カタツムリになめられ、幼虫になってからは、アシナガバチやヒヨドリ、スズメ、ヤモリ、キノボリトカゲ、アリ、カマキリなどが狙っている。成虫になって優雅に飛んでいるときも安心は出来ない。捕食者に狙われているのである。
窓からオオゴマダラを眺めていたら、さっとヒヨドリが過ぎ去り、いま飛んでいたオオゴマダラをくわえて去っていった。あっという間の出来事だった。また、あるとき、ふと桜の上を見上げたら、羽化したばかりのオオゴマダラがカマキリに捕らえられ翅をばたつかせていた。すると、そばを飛んでいたオオゴマダラが、何とカマキリに体当たりした。翅をはばたかせ、数度も体当たりをした。カマキリは応戦するためか鎌を伸ばし、捕まえていたチョウを落しそうになった。しかしさすがカマキリで、何度もチョウを掴みなおし、なかなか放さない。その後も数回チョウは体当たりしたが力尽き、近くの小枝に止まって仲間が食われるのをじっと見ていた。翅はぼろぼろだった。昆虫でも仲間を助けようという感情があるのだろうか。感動とともに不思議に思った。
別のチョウに襲われることもある。リュウキュウアサギマダラの成虫がオオゴマダラの幼虫や蛹をなめまわしているのを何度か見たが、なめられた幼虫は、動けなくなり、体に張りがなくなって死んだ。蛹も黒くなって羽化しなかった。何をなめているのか、なぜ死ぬのか分からない。不思議の一つである。
今年は、なぜかリュウキュウアサギマダラは飛来しない。他に捕食されているのかもしれない。ともあれ、オオゴマダラを飼育し姿を楽しむのは私の夏の楽しみの一つである。
伊佐節子
庭に飛来するチョウは、どのチョウも優雅で愛らしいが、オオゴマダラは別格である。
石垣島に夫が勤務している頃に六号鉢に植えられたホウライカガミをもらったのが、付き合うきっかけだった。置いたところに根を出し、そのまま根付いてしまった。今では、ヘチマ棚として作った棚の全面を覆い、艶やかな葉を繁らせている。
ホウライカガミの成長とともに、いつの間にかオオゴマダラが訪れ、産卵するようになった。白く小さな花を咲かせるが、密が豊富なようで、チョウやミツバチ、アシナガバチなど多数訪れ、羽音も聞こえるほどである。
オオゴマダラの優雅な舞い姿は、何時見ても心休まる。冬には姿が見えなくなり、暖かくなると飛来して産卵する。ひらりひらり飛ぶ姿を眺めながらどうしてここに食草があることがわかるのだろうと不思議に思う。小さな庭の一角で起こる小さな出来事だが、自然の不思議さにいつも心打たれる。
ホウライカガミは毒を持つ植物なので、それを餌にしているオオゴマダラは、他の生き物には捕食されないと書かれている文献もあるが、我が庭で観察する限り、それは違う。卵の時は、カタツムリになめられ、幼虫になってからは、アシナガバチやヒヨドリ、スズメ、ヤモリ、キノボリトカゲ、アリ、カマキリなどが狙っている。成虫になって優雅に飛んでいるときも安心は出来ない。捕食者に狙われているのである。
窓からオオゴマダラを眺めていたら、さっとヒヨドリが過ぎ去り、いま飛んでいたオオゴマダラをくわえて去っていった。あっという間の出来事だった。また、あるとき、ふと桜の上を見上げたら、羽化したばかりのオオゴマダラがカマキリに捕らえられ翅をばたつかせていた。すると、そばを飛んでいたオオゴマダラが、何とカマキリに体当たりした。翅をはばたかせ、数度も体当たりをした。カマキリは応戦するためか鎌を伸ばし、捕まえていたチョウを落しそうになった。しかしさすがカマキリで、何度もチョウを掴みなおし、なかなか放さない。その後も数回チョウは体当たりしたが力尽き、近くの小枝に止まって仲間が食われるのをじっと見ていた。翅はぼろぼろだった。昆虫でも仲間を助けようという感情があるのだろうか。感動とともに不思議に思った。
別のチョウに襲われることもある。リュウキュウアサギマダラの成虫がオオゴマダラの幼虫や蛹をなめまわしているのを何度か見たが、なめられた幼虫は、動けなくなり、体に張りがなくなって死んだ。蛹も黒くなって羽化しなかった。何をなめているのか、なぜ死ぬのか分からない。不思議の一つである。
今年は、なぜかリュウキュウアサギマダラは飛来しない。他に捕食されているのかもしれない。ともあれ、オオゴマダラを飼育し姿を楽しむのは私の夏の楽しみの一つである。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん