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2009年04月20日

がじまん第164号

一本のテープ
いなみ悦

 歌謡同好会ではたまにカラオケハウスに行く。その時講師の歌った歌が気に入った。それは、一目惚れといったところだ。次の会でもリクエストして歌ってもらった。そして自分でも歌いたいなぁと思うようになった。教室で課題曲として取り入れてくれるよう希望したが、なかなかチャンスがない。カラオケに行った時には下手ながらも歌うようにした。
 そのうち、入ったこともないレコード店に入り、「伊集ぬ花」のCDありますか、とさがしてもらった。「ありました」との声に飛び上がり、何度も聞き覚えた。トイレに入る時にスイッチオン。寝る前にオン。机に向かう時も、二、三度聞いてから始める。自信がつき、内輪では堂々と歌うことができた。しかしカラオケハウス以外で歌うのは、カラオケ用テープがないと歌えないことに気づいた。遠慮がちに講師の先生に頼んで作ってもらい、このテープに合わせ日夜練習した。
 七月、町の公民館「文教の町学園講座」のプログラムを見ると、十一月の終了式の日にのど自慢大会とあった。もしかして出られるのかな、と期待して事務局に尋ねてみた。隣の社協にあるカラオケを使用して、参加者を募ってやると言う。「しめた。その時個人以外にも、アトラクションとして歌謡同好会も参加お願いします」と要望した。参加が可能となったので、二つ目標が出来た。
 十月、エッセイストクラブの総会があり、引き続き懇談会になる。その時は飛び入りのスピーチや歌があるので試すチャンスだ。テープを持参した。いきなり歌うのも恥ずかしいので、もう一本「コモエスタ赤坂」を誰かとデュエットしようと思い、声を掛けた。なんと新会長が歌ったが、大変上手であった。
 さて、いよいよ「伊集ぬ花」を歌う番だが、それは予想外の展開があった。総会の場で、次年度の合同エッセイ集のタイトルを投票して発表する議題もあり、その結果「伊集の花」と決まった。私はチム(肝)どんどんした。こんな偶然があるでしょうか。会場全員がびっくりして聞き入った。上気して十分に歌えなかったが、四月の出版パーティーには全員で歌おうと思った。
 また同好会では、十一月に宜野湾や嘉手納のカラオケ同好会と交流会を持ちたいとの話も持ち上がり、一人一曲と決まった。私はもちろん「伊集ぬ花」にした。
 いよいよ、のど自慢のリハーサルも終わり本番の日となった。朝から咽に痰も出て咳も出たが、仕方がない。七名のエントリーがあり、みんなうまく歌っている。私はこの歌があまり知られていないので、多くの人に聞いてもらいたいとの思いで歌った。最後の審査発表で、何と予想外にも優秀賞をもらうことになった。一本のテープが素晴らしい結果をもららしてくれた。テープよ、お疲れさま。


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