2009年10月10日
がじまん第175号
ぼくは、ぼくの遺体置き場に歩き出す
二〇〇九年三月某日、明け方、不思議な夢を見た。
ぼくが、ぼんやりと歩いている。振り仰ぐと、前方右側に高い城壁らしきモノがそそり建っている。側壁には作業員らしき人々が張り付いて作業をしている。
ぼくは、その側壁に付いた石ころ道を上りはじめる。中段まで行った処の岩場に通路のようなものがあり、そこに入っていくと、向こう側に抜けた。降りる時に、作業員とすれ違った気がしたが、黒いシルエットのような気もした。
眼前に巨大な道路が広がっていて、路面が白い油液のようなものに浸されている。ぼくは、その白濁した路を歩いていく。車の残骸が至る処に飛び散っている。ぼくは、自分の車はどこだろうと、その残骸の路面を探し歩くのだが、一向に発見できない。心は、ぼんやりしているようでもあり、清明で静穏なようでもある。車を探しつつ、人だかりのしている処に戻ってみると、ひと山の残骸の置き場のような処があり、ぼくはそこにも目をやって、自分の車を探している。
ふと、足元を見るとダンボールに幾つものナンバープレートが積まれていて、目を凝らしていると、傍らから人の影らしき者が手をのばして、一枚のプレートを差し出して「これですか」と言っている。
ぼくは、24‐07と自分の車の番号を読み取るが、まだぼんやりしている。
いつの間にか、カミさんが側に来て立っている。
「あんた、どうしたの」といった顔を向けた。
プレートを差し出した男が、ぼくを見上げ、驚愕の体で、ぼくを置き場の奥の大広間のような処に誘った。ぼくは男について行きながら、多重の玉突き事故があって、奥にその遺体が安置されているという話を聞かされ、もしかしたら自分もその中にいるのではないかと思いあたり、慄然とする。
そういえば、とぼくは思い出す。高架道路の下の道路をスピードを出して右折したら、何故か油状の路面に侵入し、そのままハンドルを取られ疾走していったのだ。ぼくの車はバラバラに解体し飛び散ったはずだ。
なのに、なぜぼくは無傷で今ここにいるのか。清明な静穏な心地で、ぼくは、ぼくの遺体置き場へと歩き出す。
そこで目が覚めた。
玉木一兵
二〇〇九年三月某日、明け方、不思議な夢を見た。
ぼくが、ぼんやりと歩いている。振り仰ぐと、前方右側に高い城壁らしきモノがそそり建っている。側壁には作業員らしき人々が張り付いて作業をしている。
ぼくは、その側壁に付いた石ころ道を上りはじめる。中段まで行った処の岩場に通路のようなものがあり、そこに入っていくと、向こう側に抜けた。降りる時に、作業員とすれ違った気がしたが、黒いシルエットのような気もした。
眼前に巨大な道路が広がっていて、路面が白い油液のようなものに浸されている。ぼくは、その白濁した路を歩いていく。車の残骸が至る処に飛び散っている。ぼくは、自分の車はどこだろうと、その残骸の路面を探し歩くのだが、一向に発見できない。心は、ぼんやりしているようでもあり、清明で静穏なようでもある。車を探しつつ、人だかりのしている処に戻ってみると、ひと山の残骸の置き場のような処があり、ぼくはそこにも目をやって、自分の車を探している。
ふと、足元を見るとダンボールに幾つものナンバープレートが積まれていて、目を凝らしていると、傍らから人の影らしき者が手をのばして、一枚のプレートを差し出して「これですか」と言っている。
ぼくは、24‐07と自分の車の番号を読み取るが、まだぼんやりしている。
いつの間にか、カミさんが側に来て立っている。
「あんた、どうしたの」といった顔を向けた。
プレートを差し出した男が、ぼくを見上げ、驚愕の体で、ぼくを置き場の奥の大広間のような処に誘った。ぼくは男について行きながら、多重の玉突き事故があって、奥にその遺体が安置されているという話を聞かされ、もしかしたら自分もその中にいるのではないかと思いあたり、慄然とする。
そういえば、とぼくは思い出す。高架道路の下の道路をスピードを出して右折したら、何故か油状の路面に侵入し、そのままハンドルを取られ疾走していったのだ。ぼくの車はバラバラに解体し飛び散ったはずだ。
なのに、なぜぼくは無傷で今ここにいるのか。清明な静穏な心地で、ぼくは、ぼくの遺体置き場へと歩き出す。
そこで目が覚めた。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん