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2010年02月10日

がじまん第183号

ターちゃんとテッちゃん
宮里テツ

♪ターちゃんがかけてきて テッちゃんもかけてきて
曲がり角でぶつかって ターちゃんゴメンナサイ
テッちゃんゴメンナサイ ゴメンナサイがぶつかって
両方いっしょにワッ、ハッハア♪

 ターちゃんとテッちゃんは、やえやま幼稚園三期生のクラスメート。
 或る日の遊び時間、園舎の南と北からかけて来た二人は角で見事にぶつかってしまった。二人とも声をあげて泣き出した。
 園庭で遊んでいた子どもたちは、何事かとみんなかけ寄って来た。先生もとんで来た。そのとき一斉にうた声がわき起こったのだ。二人は、泣きべそから泣き笑いの顔になり、額(ひたい)をなでなで泣き止んだ。
冒頭の歌がそれである。
 歌の中のテッちゃんは私といいたいところだが、それはもう一人のテッちゃんで男の子。私はみんなと歌をうたったテッちゃんで女の子。
ぶらんこ、すべり台、たいこ橋と当時としては珍しい遊具で楽しく遊んだ日々をすごし、やがて小学校へ。
 ターちゃんはI校へ、私はT校へ入学した。ターちゃんとテッちゃんはそれっきり交わりは絶えてしまったがお互いに中学校、女学校を卒(お)えターちゃんは高校、大学へと進み、私は戦後の混沌(こんとん)とした社会の一員に。そして母校T校へ無免許運転のピヨピヨ教員となって赴任した。その後結婚、二児の母となって再度T校へ。
 そこへ若くピチピチしたM子さんが新任教員として赴任して来た。彼女は五年担任、私は六年担任。授業時数の関係で私のクラスの家庭科を応援してくれた。二人は意気投合、姉妹のように仲よしになった。
 そして数年後彼女はターちゃんと結婚することになり私が同僚を代表して披露宴にスピーチをすることになったのである。私は親しみを込めて幼なじみの呼び名で「ターちゃんM子さんご結婚おめでとう…」と型通りのあいさつのあと、幼稚園の思い出から中・高時代を秀才で通したターちゃんのこと、M子さんのすばらしさを述べながら例のエピソードの歌をうたったのだった。♪ターちゃんが…
 新郎、新婦はじめ臨席の皆さんはシーンと聞き入っている。テッちゃんは私とばかり思って―。やおら「テッちゃんは私ではなく別のテッちゃん、男の子でした」いい終るや会場は大爆笑。披露宴もとたんに和やかな雰囲気に包まれた。
 M子さんに会う度、あの光景が蘇える。ターちゃんは目のクリクリしたかわいい、やさしい男の子だった。
そのターちゃんとは、わがエッセイスト・クラブの大役を担う事務局長、内間美智子さんの今は亡きご夫君、多市さんである。
 幼い日の遠いはるかなあどけない思い出。あの歌を口ずさむとき、私は童心に還り、ターちゃんを偲び、あどけない幼女のテッちゃんを夢みるのである。


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