2010年10月20日
がじまん第200号
本の話
趣味の一つに読書がある。ただ、大っぴらに読書と言いたくない。ありきたり、きざっぽい、空々しい等の印象を与えるからだ。しかし、今回はあえて本のことを話題にしたい。
子どもたちの学力を伸ばすため、よく読書を奨励するが、本をあまり読まない大人ほど、読書を強要する。子どもを本好きにするには、大人自身が多くの本を読み、その楽しさが伝わる内容紹介をすることが大切だと思う。以前指導主事をしている時、ある学校の指導助言で、前述のことを助言した。すると、一人の教師から「学校では忙しくて本を読むゆとりがない」と、言われた。あえて反論しなかったが、心の中で「本は義務で読むものではない。自分のライフスタイルに、読む習慣を組み込むことが大切だ」と思った。
小学生の頃、裕福な従兄弟がいた。その家にはポプラ社の「日本文学全集」が棚に並んでいた。積ん読で、ほとんど手も付けられてない。本への興味と、真新しい紙とインクの匂いが好きで、よくそこに通い詰めた。中学生の時は友人に貸本屋の息子がいて、土日は店に入り浸って漫画や推理小説をただ読みした。大学時代、図書館と本屋によく足を運んだ。図書館から本を借りるのもよいが、自分で稼いだ金で好きな本を買って読むのは格別だった。今は本屋に行っても、立ち読みが多い。買うと、置き場に困るからだ。最近はインターネットでの情報収集が多く、本屋に行く回数も減った。
本屋に通うと、出版社の特徴がよく分かる。日本の文化を高めることに貢献していると、自負してやまない岩波書店。さすがに、俗っぽい本は見当たらない。児童図書から専門書まで、いかにもためになるという本ばかり。そのため、少々堅苦しく若者から敬遠されがちだ。この出版社のすごいところは、全国の書店とけんかしても、つぶれなかったこと。四、五年間、書店の棚から締め出しを食ったが、その間大学の生協に直に本を出して耐えしのいだという。朝日新聞は新聞界の権威だったが、いろいろな不祥事で、トップの座を読売新聞に明渡した。読売新聞は定期購読数こそ多いが、かつての朝日新聞のような権威は感じられない。百科事典で有名な平凡社。事典以外にも、「東洋文庫」等、素晴らしい本を多く出版している。岩波書店と対象的な出版社に、講談社がある。少年マガジンや週刊フライデー、子ども向けの文学集、新書本や文庫本、高度な専門書等、ピンからキリまでの本を出している出版社だ。私の好きな文庫に、社会思想社の現代教養文庫があった。会社の廃業により廃刊して、とても残念に思う。
本離れに拍車がかかっている現代社会、紙媒体から電子書籍へ移行しつつあると言われる。読み古した黄ばんだ本を手にすると、昔日の記憶がよみがえる。電子ファイルでは得られない感触だ。
新城静治
趣味の一つに読書がある。ただ、大っぴらに読書と言いたくない。ありきたり、きざっぽい、空々しい等の印象を与えるからだ。しかし、今回はあえて本のことを話題にしたい。
子どもたちの学力を伸ばすため、よく読書を奨励するが、本をあまり読まない大人ほど、読書を強要する。子どもを本好きにするには、大人自身が多くの本を読み、その楽しさが伝わる内容紹介をすることが大切だと思う。以前指導主事をしている時、ある学校の指導助言で、前述のことを助言した。すると、一人の教師から「学校では忙しくて本を読むゆとりがない」と、言われた。あえて反論しなかったが、心の中で「本は義務で読むものではない。自分のライフスタイルに、読む習慣を組み込むことが大切だ」と思った。
小学生の頃、裕福な従兄弟がいた。その家にはポプラ社の「日本文学全集」が棚に並んでいた。積ん読で、ほとんど手も付けられてない。本への興味と、真新しい紙とインクの匂いが好きで、よくそこに通い詰めた。中学生の時は友人に貸本屋の息子がいて、土日は店に入り浸って漫画や推理小説をただ読みした。大学時代、図書館と本屋によく足を運んだ。図書館から本を借りるのもよいが、自分で稼いだ金で好きな本を買って読むのは格別だった。今は本屋に行っても、立ち読みが多い。買うと、置き場に困るからだ。最近はインターネットでの情報収集が多く、本屋に行く回数も減った。
本屋に通うと、出版社の特徴がよく分かる。日本の文化を高めることに貢献していると、自負してやまない岩波書店。さすがに、俗っぽい本は見当たらない。児童図書から専門書まで、いかにもためになるという本ばかり。そのため、少々堅苦しく若者から敬遠されがちだ。この出版社のすごいところは、全国の書店とけんかしても、つぶれなかったこと。四、五年間、書店の棚から締め出しを食ったが、その間大学の生協に直に本を出して耐えしのいだという。朝日新聞は新聞界の権威だったが、いろいろな不祥事で、トップの座を読売新聞に明渡した。読売新聞は定期購読数こそ多いが、かつての朝日新聞のような権威は感じられない。百科事典で有名な平凡社。事典以外にも、「東洋文庫」等、素晴らしい本を多く出版している。岩波書店と対象的な出版社に、講談社がある。少年マガジンや週刊フライデー、子ども向けの文学集、新書本や文庫本、高度な専門書等、ピンからキリまでの本を出している出版社だ。私の好きな文庫に、社会思想社の現代教養文庫があった。会社の廃業により廃刊して、とても残念に思う。
本離れに拍車がかかっている現代社会、紙媒体から電子書籍へ移行しつつあると言われる。読み古した黄ばんだ本を手にすると、昔日の記憶がよみがえる。電子ファイルでは得られない感触だ。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん