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2011年03月20日

がじまん第210号

ある夫婦の会話                     
喜舎場紀江

妻「貴方のケータイに、この頃ハナっていう方からよく掛かってくるわね」

夫「僕のケータイ見たのか」

妻「見ましたとも。いったい誰なんですか」

夫「今、君はハナと言っただろう。ハナだと思うよ」

妻「だからそのハナって誰なんですか」

夫「時々ケータイに掛かってくる人だと思うよ」

妻「貴方、私をからかってるんですか」

夫「べつに」

妻「いったいその人とどういう関係ですか。二人だけで会ったことあるんですか」

夫「……。腹が減った。メシにしよう」

妻「私は真剣に聞いてるんですよ。ねえ、どういう関係なんですか」

夫「関係関係って何を言ってるんだ。日米関係、国際関係、上下関係、利害関係…、えーっとこんなもんか」

妻「おもしろい人ね。肝心の男女関係、肉体関係はどこへ行ったの。ごまかさないでよ」

夫「もう疲れたよ。かんにんしてくれよ。ご想像におまかせします」

妻「そう…。浮気してますよね」

夫「……」

妻「肝心なことになると黙ってしまうのね。何とか言ったらどうなんですか」

夫「本気ですよ」

妻「まあ」

夫「お前ねえ、ハナは僕のおふくろ。お前の姑じゃないか」

妻「えっ」

夫「どうしたんだよ。そんな鳩が水鉄砲を食ったような顔をして」

妻「それを言うなら豆鉄砲です。何でもいいけど、お母さまの名前はハナでしたよね」

夫「そう、クチでもミミでもなくハナだよ」

妻「あたし、すっかり忘れてたわ」

夫「亭主妬くほどもてもせずってよく言うじゃないか。しかもおふくろの名前も忘れるほど、目の色変えて食ってかかって」

妻「だって貴方だって、最初にハナがお母さまだって、仰ればよろしいじゃありませんか。持って回ったような仰り方なんかなさって」

夫「おいおい泣くほどのことか。悪かったよ」

妻「私本気で疑ってたし、貴方だって『浮気してますよね』って言ったら『本気です』って。私目の前が真っ暗になって、倒れそうになって…」

夫「勝手に人を疑って、勝手に倒れられたらかなわんじゃないか」

妻「ああ、そうそう、私お母さまに謝らなきゃ。疑って申し訳ございませんでしたって」

夫「おいおい冗談だろう。よしなさい」

妻「謝るのはいっときも早い方がいいわ。(ピッポッパッポッピッ)もしもし、お向かいの喜乃原ですけど、いつもお世話になっております。にぎりめし特上二人前、にぎりめし特上ですよ。えっ、ないんですか。ああ、にぎりずしね。そう、それ特上二人前、大至急お願いしますね」


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