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2011年12月20日

がじまん第228号

アグアスカリエンテスの温泉
伊佐節子

 二〇〇五年八月二十四日、ペルーのマチュピチュの旅の五日目。今日の午後からはマチュピチュの自由観光。チケット綴りを受け取り、昼食をマチュピチュのサンクチュアリ・ロッジで食べた。ここは超豪華ホテルで一泊五百ドル以上だ。自分達の懐具合ではとても宿泊は出来ないので、せめて昼食ぐらいは生演奏つきで優雅にと思ったからだ。ランチにしてはちょっと贅沢な食事をした。生演奏は六人の現地の若者の演奏でフォルク・ローレ。直毛で漆黒とも言えるほどの黒い髪の若者達の演奏を目を瞑って聴いていると、民族の現状を憂えているように聞こえた。チップをやって、十五ドルのCDを一枚買った。
 昼食後の観光は、妹と相談してガイドを雇う。日本語のガイドが探せず英語のガイドを雇った。二人とも英語がろくに話せないが、スペイン語の地図だけでは思うように動けず時間がもったいないと思ったからだ。女性の若いガイドを雇ったが英語が堪能ではなく、お互いブロークン英語を駆使して楽しく観光することが出来た。
 ガイドと別れ、アグアスカリエンテスのホテルへ戻ってから、温泉に行くことにした。私と妹、友人二人の四人で出かけた。ホテルを出て、線路を横切り市場通りへ出て、坂を登って行った。坂の両側はレストランやお土産品の店が並んでいる。途中のレストランから片言の日本語を話す青年が盛んに話しかけてきた。日本人に極めて好意を持っている感じだ。ハンサムではないが誠意のある人懐っこい感じの青年だった。温泉はもっと上の山にあるという。後で食べるからねといって坂を登っていった。しばらく登るとぞろぞろと人が登って行った。温泉が近いらしい。ここは雨の少ない土地らしいが小雨が降り出してきた。四人はぬれながら登って行った。山にさしかかって十分ぐらい登った頃、ふと下を見るとプールのようなものが見え、湯気がたっていた。大小合わせて五つあり、その中で老若男女が入浴している。混浴のようだ。屋根がなく雨にぬれながら入っている。
 温泉のお湯は薄いウグイス色で、脂が浮いているように見え清潔感がない。入浴する気分にはなれなかったが、ここまで来たのだからと入浴料十ソーレル(三ドルくらい)を支払い、水着とバスタオルのレンタル料もそれぞれ三ソーレルずつ払った。四人は雨でぬれているコンクリートの上を裸足でぺたぺた歩いて更衣室に行った。何名かの外国人が着替えたり水着姿でくつろいでいた。
 妹が突然入りたくないと言い出した。私も全く同感だったので、二人は即座に入らないことにした。友人二人はこれも経験だから入ろうよと勧めてくれたが、とても入る気持ちになれない。「肌寒いし、雨が降っているし、旅はまだまだ続くし」と言い訳して入らなかった。二人が上がるのを待って一緒に帰った。いい湯だったそうだ。


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