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2012年04月05日

がじまん第235号

漢字の読み書きはカン?
屋比久貞雄

 某元首相が漢字の誤読を連発して国民から一笑を買った。それにしても漢字の読み書きには首をかしげたくなるものである。
 周知のとおり漢字の読みには、呉音(七世紀ごろまでに伝わった読み)、漢音(八~九世紀に伝わった遣唐使や留学僧などによって伝えられた読み)があり、その外に年代ははっきりしないが往昔から通用して読まれている慣用音がある。
 次にそれぞれの例を挙げる。
「外」は、呉音ではゲ、漢音ではガイ、唐・宋音ではウイとなっている。同じく「頭」は、呉音ズ、漢音トウ、唐・宋音ジュウである。
診療で病院を訪ね、「外(ガイ)科(カ)をお願いします」と言ったとする。一瞬職員は対応に戸惑ってしまう。ゲカとして呉音でないと意思の疎通が止まる。今ひとつ、菓子売場に行って、「外(ガイ)郎(ロウ)五個ください」と言うと、店員は、エッと困ってしまう。ウイロウと唐・宋音でなければ通じない。
 次は慣用音の例である。「消耗」は普段よく使われている。この耗は、呉・漢音ともにコウである。しかし慣用音が定着して常用漢字でもモウとして採用されていて、モウでなければ通じなくなった。「輸出」の輸もユと読んで一般化していて慣用音である。呉音ス、漢音シュではお手上げである。
 日本語の熟語の読みで、促音や撥音の次にくる字は半濁音または濁音で読ませているのがほとんどである。吉報(キッポウ)・文殊(モンジュ)などがある。そのことをよく知っているせいか誤読されているのを耳にする。
 それは「間髪を容れず」である。カンパツと読んでいる。カンハツと読むのが正しい。それにはきちんとした根拠がある。その語は、漢籍の「間不容髪」によるもので、それを読み下すと「間不レ容レレ髪ヲ」で「カンハツヲイレズ」になる。
 字形が似ているがゆえに誤読あるいは書き間違いをしている漢字を二、三取り上げる。
まず誤読されている字から。「進捗(シンチョク)」の捗で、進捗状況として比較的使われている。シンショウと聞こえる。捗は渉に似ているのでショウと読んでしまうのであろう。意味としても捗は「はかどる」。渉は「わたる」である。
 書き間違いやすく辞書を見ても判別し難いのが「柿」と「杮」、「確」の隺と「鶴」の寉である。柿は音読みシ、訓読みカキである。杮は音読みハイ、訓読みコケラである。柿の画数は九画、杮の画数は八画で全く別字である。杮は「コケラオトシ」や「コケラブキ」などと使われている。老婆心ながらコケラは木くずのことである。確の隺は十画で、かたいやたしかの意。鶴の寉は十一画で、白いの意。したがって、隺と寉は別字。
 いやはや漢字の読み書きはカン?なのであろうか。


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