てぃーだブログ › 沖縄エッセイスト・クラブ › 会報がじまん › がじまん第253号

2013年01月05日

がじまん第253号

具志堅康子

何となく今年は良きことあるがごとく
元日の朝 晴れて風なし (啄木)
どうぞ今年もよろしくお願い致します。

良い正月ディビル

 〈ハイサイ 御衆人(グスウヨー)良(イ)い(イ)正月(ソーグヮチ)ディビル 年頭ヌエーサチウンヌキャビラ アキョーアリシークリシーするうちネ ダー辰年(タチドシ)ン終(ウ)わて、炭(タニ)と昆布(クブ)、ミカン飾(ス)ジャテ、巳年(ミードシ)ヌ正月迎えヤビタン。シンカヌチャ、イイ正月迎けーヤビタガヤー、考(カン)ゲーティンジネー互(タゲ)エニ戦世(イクサヨ)―ン凌(シヌ)ジ、アメリカ世ニなてぃん学校ン艦砲ヌ弾跡ヌ上之山、天妃小ヌ後、マタ、テント屋から始まて、コンセット教室、最後の赤瓦校舎まで転々サビビタシガ色々の事がウビンイジャチ、チャンナヤビランサー。ブルーマー姿でピチピチギャルだった姉さんター。タチバーはち、テヌグイ腰にさぎたバンカラスタイルの兄さんター、今、子孫ヌチャンデキラチ、年金トユル歳にナティネエヤビランサ ヤーサイ。二十一世紀の世の中、オスプレイーガジャーハバカイシ、チャーナティ行ちゅがワカヤイビランシガ、互いに一人タシキ タシキしガンジュウでヨンナー ヨンナー カタテ アシバナ スルティアッチ行チャビラナ。
グブリーサビタン 〉
 那覇校五期生のS君の方言での新年会の挨拶。そして、青春の歌、思い出の歌である「青い山脈」「高校三年生」の合唱で、遠い時がひき寄せられ、淡いロマンが漂う。
 懐かしさに胸に熱いものがこみあがる。心の隅の引き出しから映像をとりだしながら、宴席の友の顔々に視線をやる。何を見て、何を感じて、そして何を考えながら成長してきたのか、人生の原点ともなり得る青春時代を過ごした高校の場こそ拠り所となっているように思われる。ないない尽くしの貧しい青春時代、だが猛々しいほどの誇りを胸に大きな夢を背負い歩いた道はそれぞれ異なれど……肩書きのない現在の素顔は、まろやかな会話にはずみ、話題は青春話。感傷の波を胸に軽口の談笑にわきかえっている時
 ――おい このラフティを口にするのはちょっとためらうなァ
 ――カロリー過多になるからなァ でもおいしいぞ!
 とM君の言葉を尻目にK君はパクリと、おいしそうに食す。
 そう言えば祖父の話では、正月のマルチャジシ(真な板の肉)に始めて包丁を入れるのは一家の男主人(アルジ)であったそうだよ。沖縄の正月料理は豚肉が主だからなァと話は膨らむ。
 それらの会話にストーンと一枚の絵がめくれ落ちて、その場はまさに現在の私達、年金遊民。
 絆の糸は強く結ばれ、今を生きる支えとなっている。友愛の絆は深く結ばれて――。
 現在の私達は青春の積荷の輝きをのせた鈍行列車なれどその思惟は永遠(とわ)に!


タグ :具志堅康子

同じカテゴリー(会報がじまん)の記事

Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00 │会報がじまん