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2013年02月20日

がじまん第256号

ハードウェアーとソフトウェアー
新城静治

 社会科で歴史を学ぶ時最初に出てくることが、「四大文明」である。何故、「四大文化」ではないか疑問に思った。そこで、文明と文化の違いについて考えてみた。文化は、人間の精神的営み、芸術や宗教、さらには風俗や習慣などを指す場合が多い。「四大文明」は、人間が快適な生活をするための住居跡や道路等を基準に論じらている。つまり、文明はハードウェアーで、文化はソフトウェアーなのだ。このことに気付いて、身の回りのことをハードとソフトという視点でも考えるようになった。
 アメリカに、ビル・ゲイツという世界一の金持がいる。彼は、ウィンドウズというパソコンの基本ソフト(オペレーティングシステム略してOS)を一手に握ることで、莫大な財を手に入れた。彼はMS-DOSというOSをひっさげて、世界一のコンピュータ会社IBMに売り込んだ。IBMは、これを自社の全パソコンに組み込んで販売した。その後、ビル・ゲイツはこのOSをウインドウズにバージョンアップした。パソコンユーザーが、マイクロソフトという自社のOSに頼らざるを得ない状態を見計らってのタイミングだ。
 今度はIBMを通さずに、全世界にこのバージョンアップしたウィンドウズを売り出した。ビデオや図書の販売とは違う、フロッピーやCDに組み込んであるプログラムソフトの使用を許可するという方法だ。さしものIBMも、このOSなしではパソコンを売ることができなくなった。コンピュータ業界では世界一のIBMを、ねじ伏せたのである。しかも、ウィンドウズが動けば、IBMのパソコンにこだわる必要もない。この後、世界中にウィンドウズで作動するパソコンが氾濫するようになった。
 ビルゲイツよりずっと前(十九世紀の終わり頃)、ニュースの商人としてロイターという人物が登場した。ロイター通信やAP通信、UPI通信という名前を、新聞記事の末尾で見かけることがある。国内では、共同通信や時事通信だ。これらは、新聞社ではなく、ニュースを売る会社だ。産業革命の波に乗って物作りが旺盛なあの当時、ロイターはイギリスでロイター通信社を起こした。ニュースという情報を、商品として売り出すことは、当時としては画期的な発想だったいわれる。ビル・ゲイツ以前に、ロイターはソフトの重要性をいち早く認識し、新しい時代を展開した一人ということになる。
「ギブエンドテイク」という言葉がある。物をもらえばお返しをするという社会常識。これが、知識や情報、アイデアなどのソフトならどうだろうか。「ありがとう」の一言で終わり、これらのソフトを収集したり創り出すために要した労力やエネルギーに、鈍感な場合が多い。
 我が合同エッセイ集も、単なるハードとしての本ではなく、執筆者の思いがこもったソフトとしての価値を確認し、アピールしていきたい。


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