2013年07月05日
がじまん第265号
梅雨の「さとうきび畑」
朝、新聞を広げると真っ赤なダウンの三浦さん八十歳エベレスト登頂の記事があった。
ちょうどその日は、読谷村高志保にある「さとうきび畑」の歌碑の前で、サークルで同歌を歌うことになっていた。寺島尚彦作詞・作曲の《ざわわざわわざわわ/広いさとうきび畑は/ざわわざわわざわわ》である。あまりにも有名で何気なく歌っているが、実は沖縄戦の悲しみを歌ったものである。六十八年前の四月一日に米軍が沖縄本島に上陸したのはこの読谷村の海岸であり、翌二日、近くのチビチリガマで集団自決が起きた。この地に歌碑を建てたのは、不戦を誓い平和を発信するに相応しい場所だからである。そして我々もそれにささやかな応援をすべく、歌碑の前で歌いたいとの思いを持っていた。
半年前から計画を立てた。まず時期は、野外なので寒くない四月か五月。清明祭、ゴールデンウイークをはずし、五月半ばと決めた。次に交通手段として三案。自家用車に分乗、お金はかかるが観光バス、役場の社会福祉協議会の借用企画を利用。どう考えても三案目がよさそうだ。善は急げとすぐに社協に電話をする。予約金を入れれば受付可能とのことで、近くに住む会員を申込みに走らせた。
演奏時間は十一時からと決め、一曲だけでは四分程度で終るのであと一曲、滝廉太郎作曲の「花」を入れた。もうすぐ六月、沖縄は慰霊の行事が続く。その鎮魂の気持ちを込めて歌い終われば目的は果たせる。しかし観客もいたほうが良い演奏が出来そうだし、新聞報道をすれば多くの人に思いが伝わりそうだと欲が出てきた。読谷在の友人に観客動員をお願いし、新聞社に取材願いを送った。応援を引き受けた婦人会が、当日老人会総会の手伝いに参加することがわかり、急遽FMよみたんの放送局に呼びかけを依頼した。
バスが予定通りに着くと、すでに新聞記者も見えていた。見事なモニュメントに歌詞が刻まれている。取り急ぎスタンバイをする。風が強いがデリケートなアコーディオンを取り囲むようにリハーサルをすると、大丈夫だ。本番、「花」はアカペラで女性二部合唱、二曲目「さとうきび畑」は混声三部合唱だ。野外で歌うのは初めてであったが、思いのほか声が届いた。
サトウキビが風になびき、海を背景に、《お父さんって呼んでみたい/お父さん何処にいるの…》と思い切り声を出して歌った。会員が一つになっている実感が伝わってきた。万歳! 先生も思わず指笛でその感動を表してくれた。練習の苦労も一瞬に吹っ飛んだ。観客の皆さん有難う。翌日の新聞に平和を祈る合唱と写真入りで大きく掲載してくれたのにはびっくりし、感謝する次第である。
梅雨晴れ間ニライの海へ反戦歌 悦
いなみ悦
朝、新聞を広げると真っ赤なダウンの三浦さん八十歳エベレスト登頂の記事があった。
ちょうどその日は、読谷村高志保にある「さとうきび畑」の歌碑の前で、サークルで同歌を歌うことになっていた。寺島尚彦作詞・作曲の《ざわわざわわざわわ/広いさとうきび畑は/ざわわざわわざわわ》である。あまりにも有名で何気なく歌っているが、実は沖縄戦の悲しみを歌ったものである。六十八年前の四月一日に米軍が沖縄本島に上陸したのはこの読谷村の海岸であり、翌二日、近くのチビチリガマで集団自決が起きた。この地に歌碑を建てたのは、不戦を誓い平和を発信するに相応しい場所だからである。そして我々もそれにささやかな応援をすべく、歌碑の前で歌いたいとの思いを持っていた。
半年前から計画を立てた。まず時期は、野外なので寒くない四月か五月。清明祭、ゴールデンウイークをはずし、五月半ばと決めた。次に交通手段として三案。自家用車に分乗、お金はかかるが観光バス、役場の社会福祉協議会の借用企画を利用。どう考えても三案目がよさそうだ。善は急げとすぐに社協に電話をする。予約金を入れれば受付可能とのことで、近くに住む会員を申込みに走らせた。
演奏時間は十一時からと決め、一曲だけでは四分程度で終るのであと一曲、滝廉太郎作曲の「花」を入れた。もうすぐ六月、沖縄は慰霊の行事が続く。その鎮魂の気持ちを込めて歌い終われば目的は果たせる。しかし観客もいたほうが良い演奏が出来そうだし、新聞報道をすれば多くの人に思いが伝わりそうだと欲が出てきた。読谷在の友人に観客動員をお願いし、新聞社に取材願いを送った。応援を引き受けた婦人会が、当日老人会総会の手伝いに参加することがわかり、急遽FMよみたんの放送局に呼びかけを依頼した。
バスが予定通りに着くと、すでに新聞記者も見えていた。見事なモニュメントに歌詞が刻まれている。取り急ぎスタンバイをする。風が強いがデリケートなアコーディオンを取り囲むようにリハーサルをすると、大丈夫だ。本番、「花」はアカペラで女性二部合唱、二曲目「さとうきび畑」は混声三部合唱だ。野外で歌うのは初めてであったが、思いのほか声が届いた。
サトウキビが風になびき、海を背景に、《お父さんって呼んでみたい/お父さん何処にいるの…》と思い切り声を出して歌った。会員が一つになっている実感が伝わってきた。万歳! 先生も思わず指笛でその感動を表してくれた。練習の苦労も一瞬に吹っ飛んだ。観客の皆さん有難う。翌日の新聞に平和を祈る合唱と写真入りで大きく掲載してくれたのにはびっくりし、感謝する次第である。
梅雨晴れ間ニライの海へ反戦歌 悦
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん