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2015年12月20日

がじまん第324号

十二月は忘年会
いなみ悦

 東シナ海を眼下に見るホテルに、予定より遅れた十三時ごろ、三十名が予約席に着いた。読谷の公民館での一時間のコンサートは、在住の婦人会と老人会を招待したコーラスサークル手作りの初めての自主企画であった。十二月下旬だったので、午後はホテルでのランチを兼ねた忘年会と銘打ったのだった。先ほどの公演を労い、乾杯をして食べることに専念した。豪華な忘年会に満足し、帰路は「ゆんたく市場」に寄り、みんな農産物を買い込んで帰った。
 翌日は別のグループの忘年会があった。忘年会といえば、プレゼント交換。「五百円程度のプレゼント持参」とのメールが届いていた。昨年は百円以内だったので百円均一コーナーをくまなく見て回り、やっと写真立てにしたが、一番歓迎された品はプリントを挟むファイルであった。みんな楽器を挟むのにいいな、という眼差しで見ていた。私は大きなベジタブルの缶詰を引いた。
 今年はプレゼント選びも大変なので、買い置きしてあるワインと決めていた。会場までの運転をお願いした嫁も、会員ではないが同席の許可を得ていた。ついでに二歳の孫も連れて行く。クリスマス前なので、お店の周りの樹々は発光ダイオードの青いイルミネーションが輝いていた。暖炉の傍にはプレゼントが置かれ、ピアノがあった。先着五、六名でワインを開けて乾杯し、発声の「きよしこの夜」「荒野の果てに」を歌う。「伊波さん歌って」と先生の声。新人は先にやらなければならず、楽譜を伴奏者に渡し礼をする。ワイン一杯で頬は熱り頭が真っ白になった。気を取り戻してやり直すが、しどろもどろのカンツォーネになってしまい、「どこが弱いか、次にそこを特訓しよう」と言われた。
「次、誰々君の好きなピアノ曲を」と先生が指示。はにかみながら新顔の男性が弾き始めた。そのうち全員そろい乾杯のやり直し、料理も一皿ずつ運ばれ舌鼓を打った。自己紹介のスピーチが回ってくる。私は「八十五歳まで歌いたい」と夢のような事を言った。食事が済むと「きよしこの夜」を斉唱し、その後一人ずつ歌う。先ほどのような失敗はしないように気合を入れる。北原白秋の「かやの木山の」を初めての伴奏者と歌う。
 いよいよプレゼント交換の籤が回された。今回は一捻りした趣向があり、籤番号の若い者から引き、中身を披露する。次の人は好きな包みを選び、開けないで前の人の物が欲しければそれを奪い取ることもできるのだ。いつ奪われるかひやひや。千円の商品券はすぐに奪われた。私は嵩の大きなものを選んだら、バラの香りのするトイレットペーパーだった。


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