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2016年08月20日

がじまん第340号

ガジャン(蚊)と蚊柱
新城静治

 ガジャンへの抵抗力(鈍感力?)は、年齢が上がるにつれ高くなるらしい。ここ源河の山小屋では、ガジャン対策は必要不可欠だ。外での作業が多いため、どんなに気をつけても一日五回以上は刺されている。
 豊見城の自宅に多いガジャンはアカイエカといい、日本脳炎を媒介するコガタアカイエカと同じ仲間。源河のガジャンはほとんどヒトスジシマカというヤブ蚊の仲間で、デング熱も媒介するという。前者は主に夜間活動し、寝込みを襲うのもこれ。後者は昼だけ活動するというが、夜でも明るい室内だと血を吸われることがある。ヤブ蚊の方がかゆみは強い気がする。
 ガジャンが刺した針を抜けなくすることはできないか、試してみた。挿し込んでいる針を締め付ければ抜けなくなるであろうと考え、別の手で刺されている腕の表皮を強く引き締めた。案の定針は圧迫され抜くことができず、羽をばたつかせている。息を吹きかけると、焦っている様子がよくわかる。からかうと情が移って叩きつぶす気にはなれず、遠くに吹き飛ばした。
 子供の頃夕方野原で遊んでいる時、よく頭上に蚊柱が立っていた。何食わぬ顔で友達に近づき、しばらくして一目散にその場から離れる。厄介者を押しつけあう遊びの一つだった。実はこの虫は「ユスリカ」といい、見た目は蚊そっくりだが蚊ではなくハエの仲間で、血も吸わないという。
 伊平屋島で勤務した時、この蚊柱で感動したことがある。夏の夕方、沼地の水たまりでフナ釣りをしていた。ブーンという微かなうなり声で振り向くと、巨大な蚊柱がすれ違って行った。直径一・五メートル、高さ二メートルほどの円筒形の中で、所狭しと大量のユスリカが飛び交って、ゆっくり移動している。その周囲を数十匹のギンヤンマが取り囲み、入れ替わり立ち替わり中に突っ込んでいる。外敵の侵入で、円筒形が崩れることもない。珍しい光景に、遠ざかるまで目が離せなかった。
 なぜ蚊柱を作るかネットで調べて見た。蚊柱の中はすべてオスで、メスへの集団ラブコールだという。惹きつけられてやって来たメスが、結婚相手を確保するため中に飛び込むとのこと。伊平屋島での蚊柱は、ギンヤンマに目が行って、ユスリカのメスを見ることはできなかった。


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