2016年09月05日
がじまん第341号
仁屋爺は考えた
過日、行きつけの居酒屋「ゆい」で、天皇の退位をめぐるオコトバについて考えた。いつもの席でくつろいだあと、隣席の田中さん(ウチナームーク)に問いかけてみた。彼が言うには、平成天皇明仁は、人間天皇として政治的権限は持っていないけれど、今のアベ政治の有り方、雲行きはどうもあやしいと、伝えたかったと思うと。すなわち、現憲法下の象徴天皇として初めて即位し今の地位にあることを思うと、原発、津波、地震等の災害地を行脚し、庶民に寄り添うことを使命として果たしてきたという強い自負が述べられていると。
爺も同感ですと述べ、氏の意のある想いを押し上げた上で、持論を吐いてみた。
天皇は明治、大正、昭和、平成と続いた四代一五〇年もの長きに亘り、日本国近代化の発展史の長大な過潮の中で、植民地的な従属県として冷遇を受けてきた沖縄人への贖罪の気持ちを、日本国民に伝えて、弱い立場に立つ県民に寄り添う気概を示すべき時ではないかと吐露してみた。
私の脳裏には、いつか何かで読んた天皇の存在の心象的風景をつげる「神韻縹渺(ひょうびょう)たる天皇の権威」というコトバが思い浮かんだ。その意味は――ほのかに見えるさま/かすかではっきりしないさま(余韻縹渺)/広くかぎりないさま(縹渺たる草原)ということらしい。日本国民(庶民)の心の底にはこのコトバの意味する天皇観が、深々とある奥行きをもって存在している気がする。故にである。皇室を含めたオールジャパンで今こそ沖縄の現実に思いを馳せていただけないかと思う次第である、と。
そしたら、田中さんが賛意を示しつつ、
「それは一兵さんが小説にしたらいいですよ」と煙に巻かれたのであった。
玉木一兵
過日、行きつけの居酒屋「ゆい」で、天皇の退位をめぐるオコトバについて考えた。いつもの席でくつろいだあと、隣席の田中さん(ウチナームーク)に問いかけてみた。彼が言うには、平成天皇明仁は、人間天皇として政治的権限は持っていないけれど、今のアベ政治の有り方、雲行きはどうもあやしいと、伝えたかったと思うと。すなわち、現憲法下の象徴天皇として初めて即位し今の地位にあることを思うと、原発、津波、地震等の災害地を行脚し、庶民に寄り添うことを使命として果たしてきたという強い自負が述べられていると。
爺も同感ですと述べ、氏の意のある想いを押し上げた上で、持論を吐いてみた。
天皇は明治、大正、昭和、平成と続いた四代一五〇年もの長きに亘り、日本国近代化の発展史の長大な過潮の中で、植民地的な従属県として冷遇を受けてきた沖縄人への贖罪の気持ちを、日本国民に伝えて、弱い立場に立つ県民に寄り添う気概を示すべき時ではないかと吐露してみた。
私の脳裏には、いつか何かで読んた天皇の存在の心象的風景をつげる「神韻縹渺(ひょうびょう)たる天皇の権威」というコトバが思い浮かんだ。その意味は――ほのかに見えるさま/かすかではっきりしないさま(余韻縹渺)/広くかぎりないさま(縹渺たる草原)ということらしい。日本国民(庶民)の心の底にはこのコトバの意味する天皇観が、深々とある奥行きをもって存在している気がする。故にである。皇室を含めたオールジャパンで今こそ沖縄の現実に思いを馳せていただけないかと思う次第である、と。
そしたら、田中さんが賛意を示しつつ、
「それは一兵さんが小説にしたらいいですよ」と煙に巻かれたのであった。
Posted by 沖縄エッセイスト・クラブ会員 at 00:00
│会報がじまん