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2016年09月20日

がじまん第342号

ちょっといい話

上原盛毅

その1 ある眼科院にて
 白内障の手術のため椅子に固定された患者の前で、年配の看護婦さんが老婆に優しく声をかける。
「手術はすぐに終わりますからね。そばの椅子に掛けて旦那さんの手を握ってくださいね」
「ハンマヨー、わんねー、うぬつぅぬてぃにぎたるくとぉねーびらんしが(どうしよう、あたしゃこの人の手を握ったことなんかないのだが)」
「とー、なまるやいびんどー。つうづうとぅにぎりみそぉれー(さぁー、今ですよ。強く握ってくださいね)」

その2 もう一人の夫
 わが友人は八十近いのに、とにかく忙しい。
ある日、午前中のペタンクーを終えて、昼食を妻と共にした後、家を出るときに、午後はグランドゴルフをして、夜は模合に行くからと告げた。
 すると、妻がつぶやいた。
「我が家には、もう一人家庭的な夫が必要だわね」

その3 孫の忠告
 夏休みに、東京から孫たちが遊びに来たので、老人ホームにいる父を見舞いにつれていった。
 帰りの車の中で、好奇心旺盛な小3の孫が「ひぃおじいちゃんの耳に白いのが入っていたけど、あれ、なぁに?」と聞く。
「あれはね、補聴器といって、耳がよく聞こえるように入れてあるのだよ」というと
「じゃ、じぃじぃも入れるといいよ」

その4 東洋人の乗客
 三十年前から南米でも韓国人や中国人の姿を見かけることが多くなったが、私が勤務していたパラグアイまで来るのはそう多くない。そんなある日、ブラジルから二人の出張者が来るというので、空港に迎えに行った。出張者Aは同乗者に韓国人がいたと思い、出張者Bは同乗者に中国人がいたと思ったらしいが、二人とも出迎えた我が同僚日本人であった。

その5 混血
 キューバの日本人移民を扱ったドキュメンタリー映画「サルサとチャンプルー」の中で、当時貧困層とみられた日本人移民と結婚した白人女性―若いときは美人だったと思われる―にインタービュアーが質問する、
「日本人と結婚されるとき、迷いや周囲の反対はありませんでしたか」
 答えて曰く
「私は夫を愛し、尊敬しています。迷いはありませんでした。私にはギリシア人、フランス人、メキシコ人、キューバ人の血が流れています。子供たちにはさらに日本人が加わり、誇りに思っています」


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