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2017年03月20日

がじまん第354号

合言葉
比嘉美智子

 爽やかな秋晴れの朝くぐもりし
 鳩の鳴き声わが家へ入り来

 背筋伸ばし颯爽と歩む心掛け
 もちて生きたし傘寿の吾は

 辛きこと嫌な事など思ふまい
 明るく楽しく余生を生きむ

 初孫の二十歳(はたち)に吾は百歳か
 とても無理むりせめて卒寿まで

 八十になりて皆言ふ合言葉
 「転ばぬことと風邪ひかぬ事」

 秋空は澄みわたりたり雲白く
 台風近き予兆などなき

 神無月なるが故にて台風も
 吹き荒るるらし木も薙ぎ倒し

 道の上(へ)に鳳凰木の花びらや
 葉の貼りつきぬ台風一過

 夫婦とも傘寿となれり通院の
 日々重なりて老い痛感す

 空よりも海面耀ひみな赤し
 大(おほ)き日輪いま沈みゆく

 黄昏は衰へのとき夕映えの
 明るき中を旅立ちゆかむ


 〔私の愛誦歌〕
 憂き事の尚此の上につもれかし限りある身の力試さむ
熊沢蕃山(江戸時代の儒学者)、山中鹿之助(戦国時代の武将)両説あり

 高校生の頃に出会った作品であり、事有る度に口遊んでいる短歌である。特に下句が好きで、リズムもよく、勇気が湧いてくる。人の命も、それぞれの能力にも限界がある、どこまで出来るか、力の限り頑張ろうという、チャレンジ精神になっている。私の唯一の人生訓として、今後ともこの歌を口遊みつつ、生きていきたいと思っている。
『短歌往来』二〇一七年一月号掲載


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